沢野 鈴。
□変わらない毎日。
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都会から少し離れたこの町は静かな住宅街と、
郵便局や小さなスーパーで成り立っていた。
かつて、賑やかであっただろう商店街は今は人通りの少ないただの道となった。
ひとつの店の前で私はいつものように立ち止まる。
暗くなった店のガラスに姿を映して見るのだ。
私は代わり映えのしない自分の姿に特に不満を感じていた訳でも、
変わりたいと強く望んでいた訳でもなかった。
見た目など私にはどうでも良かったし、
昔から無頓着と言われながらも自分を醜いとは思わなかった。
それでも姿を映して自分を確認するのには、理由として表せないとても強い不安感があったからだった。
「変わってない…ね?」
安堵の溜め息を吐くと、また歩きだした。
そこに軽快な着信音。
『マユ』と画面に写されているのを見ながら携帯を開いて
「もしもし、どうしたの?」
「鈴っ!」
マユのよく通る声が耳に響いて思わず肩をすくめる。
「…ん?」
「あのね、私…彼氏ができたのぉッ!」
「えっ、良かったねーどんな人?」
あ、しまった…。
「そうッ!かっこよくてね…」
「あ…うん、……」
何時間続くかなぁ…。
面倒くさい…。