沢野 鈴。


□音。
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その日は、珍しくお父さんもお母さんもが揃っていた。

「珍しいね、何かあるの?」

靴を脱ぎながら台所にいた母に訪ねてみるけれど、様子がおかしい。

…?

私はしばらくその場に立ちすくんでいた。
奇妙な沈黙が息苦しい…耐えられずに
はぁ、と息を漏らし「お母…」

「鈴…お母さんね、お父さんと別れる事にしたの」

いきなり喋りだした母の不意討ちにビクリとして、流そうと考えた瞬間
母の言葉の意味に肩が震えた。

「!!…、えっ!?」

「…ごめんね、鈴の高校生活には何も支障はないから安心して。」

少し早口で無表情な母の言葉にリビングに居て聞こえるはずの父は何ひとつ言わない、
つまりコレは冗談でも

聞き間違いでもないのだ。

何処か他人事のように話すお母さん。

「大丈夫よ、鈴の生活には何にも困った事なんてないわよ…だから…ね?」

「………嫌」

「え?」

「嫌って言ってんのっ!」


私は家に居たくなくて、

何故か酷く胸が痛くて、

久しぶりに見たお母さんの顔が他人に見えて、


靴も履かずに外に飛び出して居た。




行く宛てなんてなかったけれど、不思議と足は動いた。


……あの公園。

ふと、頭に過った彼の声。
何故か余計に辛くなりそうで頭からすぐに追い出した。
彼が居なくても別に良かった。
私にはあの場所しかない。
幼い頃、私にはあの公園意外、居場所はなかったのだから。
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