駄文
□最も近く遠い
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「…んっ、は……っ」
闇の中、堪え切れぬ荒い息遣いと、水音が響く。
揺さぶられ、真剣な顔で行為に没頭する男鹿を見上げながら、僕はなぜこうなったのかをぼんやり考えた。
誤解も解け、僕は、しつこくしつこく男鹿につきまとった。その度に、「キモイ、ウザイ」、一緒に帰ろうと言えば、「嫌だ」と言われっ放しだったが、僕はめげなかった。
そうしたら、いつしか男鹿もほだされてくれたようで、昔みたいに一緒に過ごしてくれるようになり、僕は調子に乗って、「好きだ。」と男鹿に告白した。
男鹿は一瞬、驚いたような顔をしたが、静かに「…そうか」と言った。
それから数週間後、男鹿から「うちに泊まるか?」というお誘いがあった。
僕は即効で頷いた。
でも、今、望みに望み続けた展開になっているのに、僕の心は晴れない。
男鹿は、基本来る者拒まず、去る者追わずな男だ。今の僕だって、例に漏れないかもしれない。
正直、抱かれる前、さぞ乱暴にされる事も覚悟していたが、うんと丁寧にしてくれた。(上手いとは言えなかったが)
そうだ、男鹿は優しい男なんだ。基本は、優しい男なんだ。
今、男鹿にこうして抱かれているからって、愛されているとは限らない。
僕の気持ちに同情心が芽生えて、相手をしてくれているだけかもしれない・・・・・・・
ぽろぽろと涙がこぼれる。
「…辛えか…?」
「…ううん…嬉しいだけ…。好きだ…。大好きだよ、男鹿君…。」
男鹿の首元にしがみ付きながら必死に言葉にする。
今までで、一番切ない気分だ。キモイ嫌だ言われていた時よりも、ずっとずっと。
愛されたい。
一生叶わないかもしれないという事を自覚し、悲しみに暮れたまま、僕は意識を闇へと落としていった。
気を失ってしまった三木を抱き締めて、男鹿はそっと自分の唇を、三木のそれに押し当てる。
そして幸せそうに、「好きだぜ。」と囁いた。