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□ナニがあっても後戻り不可能
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「―――ほらよ、水だ」
「あぁ、ありがとうごぜェやす」
コト、と音を立てて土方はコップを机の上に置いた。
スッとそれを総悟が持ち上げる。
「土方さん」
「総悟」
「何だ?」
「何ですかィ?」
声のスピードは、ほぼ同じだった。
二人は同時に相手の方を見る。
「もう、終わりにしねぇか?コレ」
なんとなく、分かってたのかもしれない。
土方さんが、こうやって言ってくる、という事を。
でもやっぱり悲しいモンは悲しいんでさァ。
この気持ち、伝える事は無いけれども。
分かって欲しいと思った事すらないけれど。
「そうですねィ」
持ち前のポーカーフェイスと、Sッ気の混じった声色で総悟は答えた。
「・・・じゃあ、そういう事で、な」
土方は、なぜか驚いているようだった。
そして、少しだけ不機嫌になったようだった。
「土方さん、どうかしたんですかィ?」
「んでもねぇよ、俺は仕事に行く」
パタンと音を立てて、襖が閉まる。
部屋には不思議そうな表情の総悟だけが残った。