ノット・レストインピース

□7,パンドラ
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「キンオブゴッド、って」

 ロウとトバルカイン、二人を呆然と眺めていたカズキが、喉の奥からそれだけを絞り出す。
 その名は良く知っている。数ヶ月前嫌と言うほど味わった苦痛も未だ、確かに覚えている。ああ、今更説明するのも億劫だ、自分自身にはあまりにも近しすぎて。
 カズキが驚いている内、眼前の司祭と少年は既にバトルを開始していた。

「そうだよ、キンオブゴッドだ。だから隠していた」

 キン達を操る手を止めぬまま、ロウは先程聞こえてきたカズキの声に答える。

「……なら、何でそれを持っているんだ」
「簡単だよ。少しね、友人と戦っていたら生まれてしまった。
 ほら、プロフィリアっているじゃん。そいつと、俺のメタルドットから。だから“あの時”手に入れたわけじゃない、あれは正真正銘のバケモノだったからね。俺もあんなのはゴメンだ」

 プロフィリア、時間の流れがキンになったという仮説が立てられている珍しい新種キンだ。それと自らのメタルドットを戦わせたら生まれたと、こんな状況でなければ笑い飛ばせそうな事を聞かされてカズキは何も言えなくなる。
 必要な事だけを答え、ロウはちらりと司祭に眼を向けた。

「それで、これがトバルさんのコユウキンですか」

 シャーレの中で発光する、見たこともないキンへと視線を落とす。
 淡く発光しているそれはサイズを見る限り恐らくMサイズのキンだった。長い縦棒とそれより少しばかり短い横棒を組み合わせた、言わば十字架の形をした身体を持っている。丁度交差した中心には赤い宝石のような球体があり、そこから光を出して攻撃するらしい。
 分析している間に自らのキンが数匹、そのキンからの攻撃を受けて沈む。

「ええ。名をロザリアと言います」
「見たところ、Mサイズのソリッドですか」
「正解です。流石ですね、ロウさん」

 トバルカインのコユウキン――ロザリアの赤い球体が発光、キンオブゴッドが数匹ほど消えていく。
 ソリッドだというのなら、属性がエッジでありただでさえ他のキンよりも防御の弱いキンオブゴッドでは分が悪い。今までシャーレの隅で増殖させていたメタルドットを数匹、バトルタクトで囲んで移動させる。
 相性としてはエッジであるケーブリスには有利だし、同じソリッドのロザリアにもごく普通に対抗できる。ぶつけるキンを間違わなければ、お互いある程度優位に立てる。

「――しかし、まさかキンオブゴッドだったとは」

 くす、とトバルカインの笑い声が聞こえて、ロウはシャーレから顔を上げる。

「確かに、あなたが隠したがるわけですね」
「ええ。まあ、時期が来たらバクテリアンラボの方には提出する予定だったんですが」

 笑うトバルカインの瞳を眼鏡のレンズを通して見る。
 それからカズキを横目で見ると、シャーレの中を見つめていた。ならば、とロウはトバルカインに向き直る。
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