ノット・レストインピース
□7,パンドラ
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「お互いに全滅したキンもなし……ですね」
続けてトバルカインも苦笑し、NDSの電源を切る。
このような結果はすっきりしないが仕方がない、お互いにそう思いながらも口にすることはない。
すっきりしないというのならば全滅ルールでバトルを行うのが一番いいのだろう。しかしそこまでするほどのものでもない――そう、矛盾しながらもロウとトバルカインは思っている。
相手の隠しているものが見たかっただけで、別にそれが欲しいわけではない。
尤も、トバルカイン自身は“それだけ”ではないわけだが。
閉じたNDSを聖職衣の懐に戻して、トバルカインは微笑んだまま軽く頭を下げた。
「有り難う御座いました、ロウさん。そして、あなたが何を考えているのかというお話も」
「こちらこそ、トバルさんのコユウキンを見ることが出来て嬉しかったです。しつこく要求してしまった点、謝罪します」
ロウも頭を下げ、鞄にNDSをしまう。
地面に置いたままだった鞄を肩に担ぎ、ロウは少しだけ笑ってトバルカインを見上げた。
「それじゃあ、今日はこれで」
「おや、何か用事でも?」
「元々、どうしてもトバルさんが秘密にしているコユウキンが何なのか知りたかった、ってだけだったので」
失礼なことを言っているという自覚はあるが、嘘をつくのも忍びない。正直に言って、ロウは片手で頭を掻く。
「――そうだ、カズキさん。今度来たときにはほら、教会の中なども見てみてください。私が言うのも何ですが、綺麗なものですよ」
トバルカインは自分の背後にある教会を肩越しに振り返り、少しばかり橙色に染まってきた光に煌めく十字架を見る。
様々な色の付いたガラス――ステンドグラスが嵌められている事が外観からでも分かる教会に眼を向けて、カズキが首肯した。
「トバルさん、さようなら」
「はい。またいつでもいらしてください。歓迎しますよ」
「有り難う御座います」
自分に頭を下げてから背を向けて歩き出した二人の背を眺めて、トバルカインは眼鏡の位置を正す。眼鏡に触れた手で顔にかかった前髪を払い、少しだけ笑う。
二人が何かを話しているのか微かに声が聞こえる中、トバルカインも彼等に背を向けるように踵を返した。
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