×グレイ

□7.02
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蝉の声とともに夏が始まりを告げ始める頃。

街から少し離れたグレイの家は、交通的には少し不便なものの

涼しい風が通り、暑い日が苦手なグレイにとっても過ごしやすい空間となっている。

ナツはそこに仕事がある日以外は毎日のように通い詰めている。

グレイとしてもそれはもはや習慣のようなものだから、あまり気にしてはいない。

しかし、今日はそのナツの様子がどことなく違う気がするのだ。

別に怒っているわけではなくむしろそれと逆の、嬉しそうな満面の笑みを浮かべてグレイの元へやってきた。

毎日のように家へと来ているというのに何がそんなに嬉しいのか

わけも分からず、グレイは頭の中でハテナマークを浮かべる。

そんなグレイをよそに、ナツは突然グレイの前に手を差し出してきた。

「グレイ!!」

「・・・なんだよ。」

「プレゼントくれ!!」

「・・・・・・はあ!?」

唐突なナツの申し出にグレイは思わず変な声を出してしまう。

しかし、目の前の男はなぜ急にそんなことを言い出すのだろう。

何かの記念日?オレたちが付き合い始めたのも別に今日じゃねえし・・・。

うんうんと唸っているとグレイが悩んでいるのに気づいたのか、ナツはカレンダーの方を指差した。

「今日は7月2日だろ!!」

自信満々に言ってくるがやっぱりなんのことかさっぱり分からない。

こいつの思考回路はやっぱ謎だ・・・。

「だからなんだよ?」

「ええー・・・ここまでヒントやってんのにまだ気づかねえのかよ・・・。」

少し呆れた表情を向けてくるナツ。

それに少しイラッときて、こっちも思わずケンカ腰になってしまう。

「・・・あんま焦らすと怒んぞ。」

「だーかーらー!!今日は7月2日でナツの日だろー!!」

「・・・は?」

やっぱりこいつの思考回路は謎だ。

なんで7月2日でナツの日なんだ。そもそもそんな日は存在すんのか。

なんとなく予想していたがまさかここまでバカな答えが返ってくるとは思わず、肩から力が抜ける。

その間にも、ナツはなぜこうなったのかを嬉々として語っていった。

「ほら、オレの名前を数字にすると”ナ”が7で”ツ”が2になるだろ!だからナツの日!!」

「・・・くっだんねえ・・・。どーせ自分で考えただけだろ。」

「うっ・・・まあそーだけど・・・。」

「じゃあプレゼントあげる必要もねーだろ。本当にナツの日があるわけじゃねえし。」

「別になんかくれたっていいだろー!!グレイのケチー!!!」


ぎゃあぎゃあと騒ぎ始めたナツ。

正直面倒くさいから放っておいてもいいのだが、このまま放っておけば家を壊されかねない。

それだけは避けなければ。

だからといって、ケンカ腰に行けば家どころか家周辺のものまでチリと化してしまう。

少し癪だが、ここはナツの言うことを大人しく聞くのが一番ベストな選択だろう。

「あーもうわあったよ!!プレゼントやっからちったあ大人しくしろ!!」

「・・・何くれんの?」

グレイの一声で一瞬にして静かになるナツ。

ナツは期待のこもったまなざしでグレイを見つめる。

本当はさっさと終わらせた方が自分としても楽なのだが、なかなか勇気を出すことが出来ない。

しばらく間をおいてから、ようやく決心がついたグレイは目を瞑り、顔をナツの方に近づける。

そしてその後、ちゅっという軽い音が部屋の中に響き渡った。

「〜〜〜っっ!!こ、これでいいだろっ!!」

羞恥心からか顔を真っ赤に染めるグレイ。

それとは対照的にぽかんと状況の飲み込め切れていないナツ。

しかしすぐに理解したナツは満面の笑みを浮かべながらグレイを見つめた。

「グ、グレイ・・・!!」

「・・・んだよ、これで文句あっか!!」

恥ずかしさで今にも爆発しそうなグレイをナツが思いっきり抱きしめる。

息が少し苦しくて、抗議の声をあげようと思ったが、

ナツがあまりにも精一杯抱きしめてくるからグレイはその言葉を飲み込み、ナツの肩に頭を乗せる。

「・・・ありがと、グレイ。大好きだ。」

「・・・オレも。」
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