×グレイ

□草原に吹く風
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詳しい治療法は分からないが、やってみないか。と幾つか薦められた治療法があったが
グレイはそれら全てを丁重にお断りした。

「どうせ短いこの命を、病院のベッドの上で過ごすのなんてごめんだ。」

そういったグレイはどこか諦めたような顔だった。


それから半年。
俺とグレイはさまざまな国へ行き、旅をした。
それがグレイの夢だと言ったから。
時間がたてばたつほど、グレイは体調を壊す回数が増えていった。
そんな日は借りた部屋に二人きり。
何をするわけでもなく、ただ外の景色を眺める。
つないだ手から伝わる体温。

胸に耳を当てる度に聴こえてくる鼓動。

グレイがまだ生きていると、実感できる。

「なぁ、ナツ。」

ベッドの上で視線は景色から離さず、グレイがナツに話しかける。

「なんだ?」

「なんで、俺についてきたんだよ。
 その、辛い、だけじゃねーか・・・」


俺、もうすぐで死んじゃうのに。

今までまったく泣く素振りを見せなかったグレイの目に大粒の涙が溜まっていて
今にも泣きそうな顔をしていた。

心の優しい、仲間想いのグレイのことだ。
きっと、自分が死んで残されてしまった仲間のことを思うと、辛いのだろう。
自分のせいで仲間が泣くのを、誰よりも嫌う人だから。

「バーカ、今更何言ってんだよ。
 俺は好きでお前についてきたんだから、
 お前がそんな顔をする必要はねぇっつーの」

そういって、グレイの頭の上に手を置いて、グシャグシャと頭を撫でまわす。

「・・・ん、ありがとな。ナツ」

頬を少し染めながら、礼を言ったグレイをそっと優しく抱きしめる。

「ちょ、なんだよ急に!」

「なんか、抱きしめたくなったから。」

「はぁ?なんだそれ」

ブツブツと文句を言いながらも抱きしめ返してくれたグレイに思わず頬が緩む。

「好きだ、グレイ。」

「・・・俺も。」

そして軽くキスを交わす。

ここの風景がずっと変わらないように、
俺たちの時間もこのまま変わらずにずっと続けばいいのに。

このまま時間が止まってしまえばいいのに。






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