×グレイ

□チョコより甘い
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「あら、いらっしゃい。
 お客さんがここに来るなんて珍しいわね。」

そう告げた女店員はエプロンの紐を締めなおし、どれにしますか?とたずねてきた。

「あっと・・・実は何買うか決まってなくて・・・」

「そうなの?ならゆっくり見ていってね。
 プレゼントを買う予定ならあっちの方にあるものなんてオススメよ。」

優しく微笑みながら、店の奥の方を指差す。
そこには色とりどりのアクセサリーが多数並んでいた。

「へー綺麗だな。こんなとこじゃなくてもっと大通りの方に店出せばもっと儲かるだろうに」

「ふふ、それは褒め言葉として受け取っておくわね。
 でもいいのよ、ここで。」

「ふーん、そっか。でもやっぱもったいねぇよなぁ・・・
 こんなに綺麗なモンがたくさんあんのに。」

「ありがとう、嬉しいわ。
 でもね、お金の問題じゃないのよ。私はね、恋する乙女を見るのが好きなの。
 キラキラと輝いていて、いつでも一生懸命で。
 だからここには、本当に恋をしている子達にだけ来て欲しいの。」

「俺は乙女じゃねーけど?」

「でも、恋はしているでしょう?」

「ま、まぁ・・・そう、かな?」

「貴方も、キラキラと輝いていて凄く素敵。
 人はね、恋をしているときが一番美しく輝くの。
 だから私はそんな人たちを見ていたいし、応援してあげたい。
 だからこのお店をやるのよ。」

そう言ってにっこりと笑ったお姉さんの顔は本当に幸せそうで、グレイもそれにつられて一緒に笑った。
しばらくアクセサリーと睨み合いながら、あーでもないこーでもないと悩み続け、
結局自らがいつも愛用しているシルバーのプレートがついたお揃いのペンダントを買うことにした。
店員に礼と挨拶を告げて店を出る。
もうすでに日は沈みかけていて空をうっすらとオレンジ色に染めていた。
沈みゆく夕日の光を浴びながら、ナツの家へと続く道をひたすら歩く。
手元の袋の中には、二人の名を刻んでもらったお揃いのペンダント。
アイツはどんな顔するかな、なんて惚気たことを考えながらグレイはナツの家の扉を叩いた。





"I hope your happiness."






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