†黒の協奏曲†
□第三声【"home"】
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緤が目を覚ますと見覚えのない所に寝かされていた。
『ここは...』
声を出すと少し痛みを感じ、喉元を押さえた。
そして、必ずつけているマフラーが無い事に気づく。
『マフラー!!!』
緤の喉元には十字架に似た形の傷跡があった。
緤は喉元を隠しながら辺りをキョロキョロと見渡す。
すると、がちゃりと扉が開く音とともに誰かが部屋の中に入って来た。
『!!!!』
「あ、目覚めたみたいね。大丈夫?」
リナリーは心配そうに緤に近づく。
緤は喉元を押さえたまま答えた。
『リナリー...私は大丈夫。
あの...マフラーは?』
リナリーは喉元の傷跡に気付いたのか慌ててマフラーを渡す。
「あの...ごめんね。
寝たまましてると首が絞まっちゃうと思って外したんだけど...」
緤はマフラーを受け取り器用に巻き付け答えた。
『大丈夫。慣れてるから...』
その笑顔はどこか悲しみを含んで見えた。
「あ、あとね、コートも勝手に脱がしちゃったんだ」
リナリーは真っ黒で緤には少し大きなコートを手に取る。
緤は首を振る。
『教団の中はあったかいから大丈夫。
でも、この格好おかしくないかな?』
緤は自分の姿を見下ろす。
着ているのは巫女服のそれだった。
紅白のそれは緤の黒髪に良く似合って、肩の少し下の所は紅い紐だけで繋がっており、その隙間から白い肌が覗いていた。
リナリーは首を振る。
「そんな事ない。
緤ちゃんに似合ってるわ。
でも、珍しい服ね。祖国のもの?」
その言葉に緤の笑顔で頷いたがその笑顔は少し引き攣っていたことにリナリーは気づかなかった。
「さあ、行きましょ。
みんな、緤ちゃんを待ってる。」
リナリーは緤の手をとり部屋を後にした。