小説
□『挨拶』
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わだかまりを燻らせたまま、鳴海はライドウとの同居を受け入れた。
わだかまりといっても、それは鳴海ひとりが抱えているに過ぎず、ライドウはさして気にしている風ではなかった。
ライドウとの共同生活は、良くも悪くも、鳴海に影響を与えた。
それまでは、独身貴族を満喫できていたのに。
「おはようございます」
「はい、おはよう」
妻を娶るよりも先に扶養者を得てしまった鳴海としては、この子が女性だったらな、と思わずにはおれない。
そうは思うものの、では妻にしたい相手がいるのかというと、これもいない。
結局は、八方塞がりなのだ。
今日も、さして陽気な会話もなく、ライドウの作った朝食を、二人でもそもそと食べる。
はす向かいで食べるには、あまりに会話がなさすぎた。