小説

□『春風』
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ライドウは、志乃田神社境内の奥で、面白い仲魔を味方に得た。
ヨシツネと名乗り、鎧甲冑に身を包んでいるその仲魔は、「モダン」を口にするのだ。

「ヨシツネは面白いなあ。鳴海さんにも、見えたらいいのに」

「鳴海?」

「僕が居候させて貰っている、探偵事務所の所長だ」

ヨシツネは興味なさ気に、ふうん、と呟くと甲冑の触れ合う音をさせながら、黙ってライドウの後ろをついて来る。
ライドウはというと、沈黙をさして苦痛とも思っていないようで、彼もその場の雰囲気に自らを任せるままにしている。

電車を待つ間、駅舎には、ライドウの他に利用者はいなかった。
それをいいことに、ヨシツネとゴウトと会話する。

「鳴海さんは、帝都が似合ってる」

「似合う?」

ヨシツネの短い問いに、ライドウは「見ればわかる」と答えただけだった。

「まあ確かに」

低い位置から、ゴウトの応じる声がする。「まあ確かに、あれはモダンだろうな」長く細い尾を揺らしながら、ゴウトは言った。

「その鳴海とやらは、モダンなのか……」

ヨシツネの呟きは、列車の汽笛に掻き消された。
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