シスターと女王と想い人の学園戦争

□1行目 幼なじみが来ました
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 神威大門統合学園。
 プロのLBXプレイヤー養成施設として、神威島に置かれた学園。
 実は、そこはとある教師のご厚意によって、シスターの制度が設けられている。
 その制度を利用できる条件はとても厳しく、利用できる生徒は限られている。
 しかしもし満たすことができれば、学費免除などの好待遇を受けることができる。


 そのわずかの内に入っている唯一の生徒が、私……水無月ミサチです。
 その厳しい条件とは、一つ。入学して一年の間、成績は常にトップでいること。
 一つ。放課後に行われるLBXによる模擬戦・ウォータイムで、部隊長にはおらず、されどある程度の活躍をすること。
 一つ。女子生徒であること。

 その制度を受けている証として、シスターの衣装を着て学園生活を送ることを義務付けられている。
 この格好をし、本物のシスターのように高貴、博愛、貞淑を守ることで、制度を受け続けることができる。
 その制度を設立してくださった先生のご事情によるものだと私は聞いている。
 しかし、思ったより律儀に守ることのできない生徒が多く生まれてしまったらしい。
 みんな……抑圧されるほどに、恋することをうらやましく思ったみたいで。
 それからシスターの衣装を学園内で着用する生徒は……私だけとなってしまった。

 そんな私のあだ名は、『フィアー・ブルーマザー』。
 畏れるべき聖母、という意味。
 いつからかそう呼ばれるようになった。
 ブルー、青は聖母の象徴らしい。
 同じ部隊の子は、畏れることも、恐れることもなく、優しく接してくれるけれど、私にとってそのあだ名は怖いもので、ちょっと悲しい。
 聖母って、もっと、人に優しくて、怒り憎しみを全て受け入れ、愛を分け与える者でしょう?
 こんな怖いあだ名をもらうほど、私はそこまで恐ろしい人になったつもりはない。
 その上。


 ……シスターに、私はなっていけなかったのかもしれない。


 学園におけるシスターとは形だけのもので、特別なことといったら、普段学園で着用する制服が、シスターの着る、飾り気がなく、頭を覆うベールを着用し、裾の長いスカートに替わるだけ。
 別に特定の宗教に入らなければならないとか、そういうのじゃないの。ただ学費を代わりに支払ってくださる方が、島内にいる教会の人で、その人への感謝の証として着る決まりが作られた。
 私は形だけのシスター。
 ……それでも、先生方には言えない秘密が、一つある。自分は本物のシスターではなくても、あまり先生に忠誠的だとは言えない。
 それは、とある人物と関係している。

 その人が……この、神威大門統合学園に、なんの兆しもなくやってくるところから、この物語は始まる。


 その再会が第4小隊、2年5組、学園全体に関わるとも知らずに。
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