シスターと女王と想い人の学園戦争

□5行目 私たちの出会いは5年前からです
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 5年前のこと。
 お母さんは幼い頃に亡くなり、父の手一つで育てられた。

 お父さんはタイニーオービット社の社員で、とあるLBXの後継機の研究・製作に携わっていた。
 でも、何故か新任の社長から社員一斉解雇のお達しが来て……
 お父さんは、行方をくらませた。1週間も、家に帰ってこなかった。
 それから私は施設に送られ、孤独な生活を始めた。元々友達を作るのが苦手だったから、話し相手は施設で私たちを育てたシスターとお父さんからもらったジョーカーしかいなかった。
 けれど……お父さんに会いたい。
 その思いが強まり、私はある日ついに施設から飛び出した。
 外の世界は全く知らない土地で、出て10分で迷子になった。
 お父さんに会いたい気持ちばかり考えてたから、ようやく知らない場所に立っていることに気付いても遅く。

 疲れて公園のブランコに座っていると、近くで男の子たちがLBXバトルをしているのが見えた。けど、見ていると思われたくなくて、知らないフリをしてブランコを漕ぎ出した。

 けど、揺れているうちにポーチの中身が暴れて、お守りとして持ってたジョーカーが飛び出して……
 それを拾ってくれたのが、アラタくん。
 そして私のジョーカーを見て……勝負を持ちかけた。


「お前、1人か? なぁ、一緒に遊ぼーぜ!」
 ……休憩だし、少しくらい遊んだっていいよね……バトル、やったことないけど。
『……うん……』
 話しかけられた戸惑いがあったけど、その人は私の手を引っ張っては、小さな戦場へと連れ出した。
 男の子はキラキラと目を輝かせてジョーカーを凝視し始めた。
「おぉっジョーカーか! よくこんな操作が難しい機体使えるなぁ」
『…………うん……』
 お父さんの試作品を貰っただけ、だけど。
「じゃあバトルやろーぜ!」
『……うんっ……』
 首をこくこくと頷くことしかしなかったけど、会話にならない会話よりも、LBXバトルで私たちはお互いの仲を深めた。他にもその人の友達がいたけど、一番仲良くなれたのは、声をかけてくれた子だった。
 そもそも、このバトルが私にとって初めての戦いだった。今までジョーカーはお守りとして持ってたから。
「お前強ぇな! たくさんバトルしてるの!?」
『……ううん……これが初めて』
「初めてなのにあんな動きができたんだ! かっけー!
 オレ瀬名アラタ! お前の名前は?」

『……水無月、ミサチ……』
 人見知りな私が、自分から進んで自己紹介をするなんて思いもしなかった。
 それほど、アラタくんは信じられる人だと人見知りながらに思えたんだ。
「ミサチか! またバトルやろーぜ!
 次はぜってー負けねーからな!」
『……うん、また、バトル、しようね……』
 初めて……お父さん以外の人にはっきりした言葉を伝えられた。
 この時からかな……アラタくんが特別な人だと感じたのは。

 いつの間にかお父さんに会いたいという気持ちが無くなり、元来た道を辿って施設に戻った。
 シスターたちに心配されたけど、私の頭の中は、アラタくんのことでいっぱいになった。
 次の日は、今度は一人のシスターと一緒にその公園に遊びに行った。アラタくんは私に気付いて手を振ってくれた。
 またバトルをしたけど、結局また私の勝ち。でもその次にバトルしたら、アラタくんが勝った。アラタくんは、だんだん強くなった。
 シスターは私たちに影響されたのか、自分のLBXを持ち始めた。施設にいる時はシスターに教えたり、他の子とバトルをしたりした。

 数年ほど、あの公園でバトルを通じて仲良くなった。
 しかし言い換えれば、アラタくんに会える機会はあの公園でだけ、ってこと。一応大会で一緒に参加したけど、小学校は別々だったしアラタくんは私の事情を察しているのか家に招待しようとも施設に行きたいとも言わなかった。

 そして小学校を卒業する間近。
 プロリーグが設立され、神威大門が出来たと聞いてから、私はある決意をした。
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