だぎゃー!

□000 オタクの幼馴染だからって私も好きなわけではない!
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「かわいいなぁ、マサムネたん……」


テレビを見て何気なく呟いた一言。それは今の私にとって禁句であった。
なんでかって?


画面の向こうで、可愛い衣装と顔でキャピキャピと踊るのは戦国武将系アイドル・伊達マサムネ。
伊達政宗から取ってるけど女の子だ。つーか偽名だ。
もひとつおまけに……私自身だ。



そう、この幼馴染・大空ヒロはどうやらマサムネを可愛く思っているらしい。
だけど私を可愛く思ったことはないだろう。


「本当にミノリと同じ人なのかなー…?」
『悪かったな私の方がブスで!』
「そそそそそんなことは言ってないよ!ただマサムネたんの方がミノリよりかわい…」
『ほぉら言っただがや!おみゃーはマサムネたんばっかで…この色男が!』
「ミノリ、名古屋弁出てる…」


私は昔から子役をしていた。その甲斐があってか、アイドルとしてデビューを果たし、今は知る人ぞ知るくらいの認知数だが歌ったり踊ったりしている。ちなみに自分はマサムネのくせに、ナゴヤシティ出身である。

彼は大空ヒロ。こんなオタルックスだけど小学校の時からどんなところでも一緒で、ゲームをしたり演技のチェックもしてくれた。いわゆる幼馴染みっていうやつ。
で、アイドルデビューした時は喜んでくれた……けど、普通の私に「かわいい」なんて言ったことはない。マサムネのときだけよく連呼する。
……別に嫉妬してるわけじゃないけど、嬉しいようで嬉しくない。
まぁ、直に可愛いって言ってくれてるから仕事が頑張れるけど………



『あーなたのハートに…』

「伊達、ソォォォォォド!」


新曲、「あなたのハートに伊達ソード」(自分で歌っといて変な曲名だ)を合いの手のように一人で歌うヒロ。今は二人だけでも、こんなイタイところを見られたくない。
しかも、今コイツは特撮ヒーローになったつもりでいるらしい。(自分が言うのもなんだけど)本当に痛々しいよ。



「今日も可愛かったなぁ、マサムネたん…」

……胸くそおおちゃくい。あ、胸くそ悪いってこと。いつもは無理して共通語喋ってるけど、どうやら興奮すると素の名古屋弁に戻ってしまうらしい。いつもヒロが名古屋弁を喋っていることを指摘しているのは、落ち着け、とも言ってるのかもしれない。


いつも彼がしょっているリュックには、ポスターが2枚、筒状に巻かれて刺さっている。
その中の一枚のポスターは、もしかしなくてもわた……マサムネだ。しかもデビューイベントでCDを買った人限定にもらえるもので、指折りでしか数えられないほど渡されなかった…その一枚だ。
内心嬉しいが、さいが本当の自分のことではあらすか。…また名古屋弁だぎゃー。

だって……こんな奴でも、たまにかっこいいトコ見せてくれるヒロが好きだもん。だから、「好き」って言ってちょう。
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