感謝感激!

□第二、ちょうだい!
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世間は卒業式シーズン。…私も、今年でこのミソラ一中を卒業します。
さよなら、我が母校………というのは建前!今回の目的はただ一つ!



卒業式に、片思いの相手に第二ボタンを貰うこと!
この学校は私服登校だけど、あの人……仙道くんはジャケットにボタンがついている!つまりボタンが貰える確率……は少なからずあるということが証明できる!
…少なからずだよ、もしかしたら断られるかもしれないし!


『せっ、仙道くん!』

だから、せめてでも学校がばらばらになってしまう仙道くんに……想いを伝えたい!



振り返った彼の姿は…まさに、あの時と同じ姿。人を見下すような視線が、たまらないです……!

「なんだい、鬱陶しいねェ」

ああ、話しかけてからの罵倒ありがとうござ……じゃなくて…
貴方の、ことが…

『貴方のことが好きなので第二下さい!!』


………言えた、けど何かが足りない……足りなかった………


「はァ?第二って………これのことか?」



ポイ、と投げ出された…のは一つのヘッドパーツ。
レッドカラーで、ブルーの瞳とお口が特徴的な………


(…ジョーカーMkー2……まーく、つー?)

つー……第二……ああ、二代目のLBXってか……じゃなくてな………

『じゃなくて!第二ボタンが欲しくて……』


……あれ、足音がこっちに近くなる。え、何…なんで仙道くんが私の方に近付いてるの?あっジョーカーを返して欲しいのか…そうだよねそうなんだよね!

手のひらを差し出してジョーカーのパーツを見せる。そして仙道くんが手をかざしたと思いきや、くるくると手を回して……離せば、一つのボタンに大変身したのだ!すごーい!

いや待ってええええ!?感心している場合じゃないって、だって仙道くんのジャケットのボタンは……
………残ってる。あれ、これってなんだ?よく見ると仙道くんのジャケットのボタンじゃないし……





「あれっどこに行った俺の第二ボタン!
誰か可愛い子にあげるハズだった俺の第二ボタンは!?」

近くで、コンタクトを探すように這ってキョロキョロと見回している……風間くん。
もう一度、ボタンを確認した。そして風間くんのシャツを凝視。




……このボタン、風間くんのかよ…!
最後の最後まで仙道くんにコケにされてるよ、哀れすぎる……
…最後の最後に、第二ボタンを……あげようかな…いや、正しくは渡す…だけど。
いや、もしここで渡してしまったら仙道くんに貰ったミラクルが消えてしまう!それはいやん!

「…で、そんなモノ貰ってどうする気なのさ?どうせただのボタンだろ」


……ただの、ボタン……
ただの他人のボタン…そうだ、だったら持ち主に返すのが、中学生最後の善行だろ…!
告白もした、ボタンももらったのなら…例えそのボタンが失われようと、わが生涯に悔いなど…ない!

後ろを振り向き、最後にボタンをもらった嬉しさをかみ締めかみ締め……前に進んだ。
……いたっ!なに、髪の毛が痛い……


「…どういうことだい、これは」

…どどど、どうして髪の毛とボタンが絡まったの!?しかも運よく第二の部分に……これはもしかして、神様が痛みをよく受け取る私に慈悲をくださったの!?この後どうなるの!?

『か、髪がボタンに引っかかっちゃったんですねぇ〜……外そうか!』

うわああああここここれで急接近するんだ神様意地悪がすぎますってありがとうございます!

「よし……少しじっとしてろ」

『ちょっ、引っ張らないで!千切るとボタンに髪が残っちゃいます!』
「……チッ…
……分かったから黙って大人しくしてろ」

右手から手品で現したのはおなじみのタロットカード。……カード?カード………

…まさか、怪盗の犯行予告みたいにスパッ!…と切るみたいな!?だからボタンに髪の毛がついたままに…!


………ぶらん、と髪に重みがかかった。
重みの先に触れると、それは丸くてすべすべしているもの……するりと抜けた。
握った手を開けば、それは…一つのボタンだった。


「……それ、やるよ」
『…え………!?』


仙道くんは……ボタンの根元ごと切ったの!?すごいその瞬間見たかった!…じゃ・な・く・て!
でも…ラッキートラブルでも手に入れられただけでも嬉しい…!よし家宝にしよう!

「わかったら家宝にするか煎じて飲むか好きにしてどっか行ってな!」
『あっ……ありがとうございます!』


冷たい目で見下されてるけど超幸せ…!
幸せの絶頂のまま、風間くんのボタンを地面に投げ捨て、ららるんるんるんとスキップで去った。この卒業式は……一生忘れられない!!








…………こ、告白の返事聞いてないまま進学してしまったああああああ!!

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