シスターと女王と想い人の学園戦争
□8行目 肝試しデート、緊張します
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今日のエルドバンド戦、すごく大変そうだった。
だからアラタくんに「お疲れ様」って伝えたい。好きな気持ちは仲間にバレちゃっても本人には言えないけど……
他の言葉くらいは、はっきりと言いたい。
アラタくんを励ますくらいなら、まだシスターとしてできることの範囲内、だよね!
「そんなに固くなってるといずれバレるぞ?」
『ひゃああっ!』
し、シスターメイ! またいつの間に!
顔が真っ赤だ、と頬をぷにぷにとつつかれる。ああっ、恥ずかしい!
そ、それは……どうして、緊張してしまうのか自分でも分からない。人見知りだから、かな……
「まぁ、言いたい事は早めに言っておくべきだぞ。じゃあな」
えっ、なんで帰っちゃうんですか!
その理由は直後に分かった。
「ミサチーッ!
ここにいたのか!」
『アラタくん……! どうしたの?』
「あのさ、シルバークレジットが入ったからさ! 一緒に何か食おうぜ!」
な、何か食べる!?
でもそれって、いわゆる、デートというもの……!
ああっ、思い込み過ぎよ私! アラタくんはそんなつもりで私を誘ったんじゃないわ!
『わ、私でいいのなら……』
「お前じゃなきゃダメなんだ!
な、行こうぜ!」
私の手を引っ張り、早足で学校を出る。
……手の温もりが、優しい。お父さんの手を繋いだ時を思い出す。
あっ、お疲れ様を言うタイミングを失った!
『アラタくん、それは悪いよ!』
「いや、悪くない!」
『ダメだって……!
奢ってもらうなんて悪いよ!
アイス、自分のクレジットで買うよ』
「いや、オレが誘ったんだからミサチのアイスはオレが買う!」
うう、結局買って貰っちゃった……
一つだけじゃなく、もう一つも。
そのもう一つが、二つで一つのアイスだからそれは割り勘してもらうべきだったかな。
こうやってアイスを食べるのも久しぶり。懐かしい気がするな。
アラタくんがいると、色々と思い出す事がある。けど、やることは初めてでいっぱいで。
こうやって、アラタくんと色んなことを……これからやりたいな。
デートだけじゃなくて、もっと、たくさんの……って、今回はやっぱりデートってことでいいのかな!? 初デートはこんなもので良かったかな……!
「ミサチ」
『な、なあに?』
「アイスついてるぜ?」
するとアラタくんは、親指で私の口元を……
……え? ぬ、ぬぐ、拭っ、た……!?
「……あー……これ、どうしよう……」
アラタくんの、お、親指に、アイスがついてる。
そうだ、ここはハンカチで拭かなきゃ!
『はい、ハンカチ……』
ついてるなら、言えば自分で取ったのに……!
口の近くに指が……すごく、ドキドキする。
息ができなさそう。これからどうすればいいんだろう。
こ、こんな時にメイさんに頼ろうなんて思っちゃダメなのに……!
と、とりあえず落ち着かなきゃ。挙動不審になっちゃう!
「あまずっぺーなオイ!!」
「ちょっメイ先生声が大きい!」
……今、メイさんとユノちゃんの声が聞こえたような。
「そのイチゴアイス美味しそうだな! オレにも一口くれよ!」
『えっ!? ででで、でもそれって』
「オレのアイスバーあげるからさ!
……もしかして、バニラ嫌いか?」
『ううんっむしろ大好き!
……じゃあ、一口だけ……』
こ、断れない。
でもこれって、か、間接キスになるよね!?
落ち着かなきゃ、落ち着かなきゃ水無月ミサチ。これで動じたら本物の挙動不審だわ。
……視線を感じる。それも複数から。やっぱりメイさん達がどこかで見てるんじゃ……!
そこを見てみるけど誰もいない。
別の方向を向くけど、フジリッツァの生徒がスルメイカをかじってるからこっちを見ているわけじゃないみたい。
……まさか、ね。この気持ちは仲間ならともかく、少なくとも本人には知られたくないのだから。
「アーリーン、やっぱ風の頼りはただのウワサにすぎなかった……」
『なんのことですか』
「前に、ジュンの連絡に入った水無月ミサチの声を分析して……とある事実をゲットしたんだ。
瀬名アラタと水無月ミサチってぜってぇ付き合ってっと!」