だぎゃー!

□000 オタクの幼馴染だからって私も好きなわけではない!
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『……あのさ、ヒロ』
「ななな、何?」


さっきのことでまだ怒ってるのかと思ってるんだろう…少しびびって返答された。


『別にさっきのことは怒ってない!
…ただ、一つ聞きたいんだ』
「うん……いいよ」


『私とマサムネ……どっちが好き?』







「今日のゲストは、戦国武将系アイドル・伊達マサムネちゃんでした〜!」
『ありがとうございましたぁ!』


おっと、アイドル紹介番組が終わったみたいだ。じゃあ消そう。


「えっ、えっ!?
そんなこと言われても………」
『そんなこと…なんかじゃない。
悪いけど真剣なんだ……どっちの私が好きなの?』


ああ、ヒロ余計に慌ててる。それほどの問題かな……?
でもさ…マサムネだけじゃなくて本当の私をも好きなのかを聞きたいんだ。


「そんなこと言われたって……ミノリはミノリだよ!」
『そんなことやなが!!ちゃんと答えろ、ヒロのたーけ!』
「だから!ミノリも好きだって言ってるんだよ!?」











……自分で叫んでおいて、言った内容を思い返せば恥ずかしい。
今の僕、ミノリに「好き」って言っちゃった…!
でも本当になんて言えばよかったのか分からない。だって、この子に対する「好き」は友達としての「好き」であって、マサムネたんに対する「好き」は…………
……なんだろう?別に、ヒーローのようにかっこよく活躍したから「自分もそうなりたい…!」という「憧れ」はなくって、ただ単純に「可愛い」って思っているだけで………
…………………違う。僕は、ミノリが「好き」なんじゃない。「大好き」なんだ。
大好きな彼女がもっと可愛くなってるから……マサムネたんが………


じゃあ、ミノリとマサムネたんに恋をしてるんだ。…って、どうなってるんだ!?





『……ロ、大空ヒロ!何ボーっとしとんがね!
たーけた余韻でも引きずっとんがや?』
「ちちち、違うよ!
それにバカなことなんて言ってないよ!本気なんだ!」
『……何言っちょるんねゃあ……それに顔があきゃー(赤い)みゃー!何の意味で言ったんかは知らんさいが……だったら、だったら………

…私にも、「可愛い」って……言って…!
マサムネじゃなくて、私を見て!』
「だって恥ずかしいからっ!
本当の君に「可愛い」って言える勇気なんてないよ僕にはっ!!」


もう、今しかない。ここで、君に対する本音をぶつけるよ。出し惜しみ…じゃない、言い惜しみなんてせずに言い切ってやるさ。


「今君が好きだって自覚したら尚更だよ!」



『…………………!』


そのまま彼女は喋ることなく、ふいっと顔を合わせなくなった。
しまった、言い過ぎた。…こんな僕じゃ、言われて傷付くだけか………


リュックを背負って部屋から出て行く。…彼女は止めもせずに背中を向けたままだった。かける言葉もない。僕はそのまま無言で外に出た。


いつものゲーセンで、いつものゲームで。気を紛らわそうとしても忘れられない。…訳の分からない痛みが胸を刺していた。


「チクショウ、また負けたよ!」
「だけど今日のアイツ、なんだか楽しそうじゃねーなぁ…」

勝ったのに、なんだかいい気がしない。…彼女の怒った顔がちらついて…謝りに行きたいけど、行きづらい……


……帰ろうとした矢先、今度はミノリの驚いた顔が段々、近付いていく映像が見えた。なんだろう、この感じ……
悪い予感はしないけど、さすがにこのままだと気まずいのは分かった。また明日会いに行こう。
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