感謝感激!

□テレビ越しではなく目の前で
2ページ/4ページ

『確かこの辺に向かったはず……』


イサナは、CCMを片手に道をぶらぶらしていた。いや、人捜しだ。
しかし角をもう一回曲がっても、その先どこへ行ったかなんては分からない…完全に迷った。







『田宮さん、ちょっと出るまで私のCCMに電話して!』
「え?いいけど、落としたの?」
『すぐに戻るからかけて!』
「もう…急いでね、セッティング遅れないようにね!」
『はーい!』


帽子を被ったまま、アイドル時の髪型のままで…飛び出して行った。









『うおっ!電話鳴ってる…落とし主からかな?
…出た方がいいかな……』

しかし、相手次第では不愉快に思わせるかもしれない。もしかしたら、仕事用に使ってて重要な電話だったら…それは出ない方が吉だろう。
というか…着信音が「貴方のハートに伊達ソード」……伊達マサムネが好きなのかな、落とし主は?

『突き刺さるこの思い〜
ま〜るで、恋〜のよ〜うだね〜…
そんなお〜と〜め〜の、ハートに……
伊達、ソー『うわああああああ!?』


うおっつい大声で歌ってしまった!そしてなんか私以上にでかい声で叫ぶ子が……びっくりして声がした方向見ちゃったよ。
その先には……なんと、さっきぶつかった女の子が慌ててこっちに向かっていた。


『あのー、これもしかしてアナタの…』
『それ確かに私のです……はぁ…はぁ……
…それ、何もされてません!?』
『えっ……いや、ただ持ってただけで中身は見てないけど…』

CCMを手渡せば、着メロが止まり、電話の相手と会話していた。きっと、近くの人とかに連絡して探そうとしたのかな…

『もしもし田宮さん、見つかった!
親切なお姉さんが拾ってくれたの…えっ、もう始まる!?分かった、すぐ戻るから!

……疑ってごめんなさい、そして拾ってくれてありがとうございます!
それでは私、行かなくてはならないので……』


通話をやめればまたまた一礼して、もと来た道を折り返して行ってしまった。
……さっきの叫び声、どっかというか…セカンドシングルの「命短し叫べよ人よ」のシャウト部分とほぼ似てたなぁ…もしかしなくても、ちょっと確かめに行きたい!
ほんの好奇心が、今日の寄り道を作り出す。
今回は確かに彼女の行った方向が分かったぞ。たしかここは……ミソラ一中!
………って、ダイちゃんの行ってる中学じゃん!えっここの生徒なの…!?
よしっこうなったら侵入するしかないでしょ!と抜き足差し足で忍び込もうと……



「何勝手に入ろうとしてるんだい?」
『うおおおダイちゃん!…見つけるの早いよ…』

校門に入るなりいきなり肩を叩かれた。叩いた相手は……イサナの幼なじみ、仙道ダイキ。


『ちょっ睨まないで睨まないで!私は不法侵入のつもりで来たわけじゃないって!やってることは不法侵入だけど!』
「別に捜す気はなかったけどね、この犯罪者め…とにかく今日はお前も帰れよ」
『なんでよケチ、別にダイちゃんに用があって来たわけじゃないのに』
「だったら尚更だ、帰れ」
『私の好きな子がここにいるの!だから離して!』

うわぁぁぁ全然離そうとしない、まともに授業に出てないとか言ってる割にはこの学校に対して真面目じゃないかな?


「……あの、ここ撮影に使うので早く下校してくれませんか…?」

私たちの前には、なんだか偉そうなお姉さんが引き止めてきた。…おっと、邪魔になっちゃ悪いよね。


『…し、失礼しました……』
「チッ、だから言ったのに」
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ