感謝感激!

□仙道ダイキと運動会
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我がクラスメート、仙道ダイキは一度も学校行事といったものに参加したことが無い。
噂に聞けば、その日はゲームセンターだの別の中学校だのに姿を現す……とか。
…彼は義務教育という四字熟語(?)を知らないんじゃないだろうか。行事だけでなく、たまに授業をサボったりしているし。

一学期の球技大会だってオリエンテーションだって、二学期の合唱だって出ていない。修学旅行も近いのに、それでいいのだろうか?
だって!今の私たちは中学生最後の年を歩んでいるのに!このままつまらない最後を飾っていいのだろうか!?
……受験なんて話は置いといて、今の私たちには「青春」が大いに必要だ。後の糧となるからね。

………というのはこの前読んだ本の受け売りだけどね。本当は………



『アナタが出ないと二人三脚のメンバーが足りないの!私と組んで!』
「イヤだね」


即答されるとは思ったけど……!せめて理由も併せて答えて欲しいんだけど………

道中で何やっているんだろう、と思いながらも必死に頼みを試みる。


「暑いのは嫌いなんでね、組むなら犬でもなんでも組みな」
『そこをなんとか!
………出てくれるなら、アンタの欲しいもの…買える範囲まで買うから!5000クレジット以内で、さ!』

パンッと手を合わせて何度も頭を下げる。
理由は言ってくれたけど、やっぱり出てもらわないと困る。
ウチの中学校の二人三脚はリレー形式で、他の競技に出る人による代わりは禁止されている。つまり、一人でも足りないと出場が出来ない。最初に走った人がアンカーでも走ろうとしてもそれもご法度だ。

だから、唯一どの種目にもエントリーされていない仙道くんに頼んだのに。そもそも人を金で釣ろうだなんてそれは卑劣な行為だよね。はぁ、諦めるしかないのか………


「…俺の欲しいもの、ねぇ」

お、取り引きに展開が起きた…!?
思わず俯いた顔を勢いよく上げ、輝いた期待の目で彼をみつめた。


「まぁ…どうせお前じゃ買えないだろうけどな」
『それって何!?だったらもう何でも買っちゃうから言って!買うから運動会に……』

出ると思ってつい顔と顔との距離が分からなくなってしまう。
気が付いたのは、右耳スレスレに一枚のカードが風を切ったことだ。


『うわわわわわゴメンっ!
……それで、何が欲しいの?』


反射で顔を離し、なんとなくカードを見ると……仙道くんの指付け根、カードの下には「THE WORLD」と書かれていた。…特に意味もなさそうだけど。


「完全なる勝利」



ここ、ズッコケるとこ?
君って中学生なの?中二なの?

……それ以前に、そんなものはお金で買えないよ。俗に言う……プライスレスっていうやつ?
いや、待てよ…つまり、二人三脚の勝利を掴み取ろうってことかもしれない……


『…よし分かった!頑張って勝とうってことだね!』
「その勝負を買収すれば俺の出る幕なんてないってわかんねぇのか?」





その発想はなかった………
結局お前出ねーじゃん!5000クレジットをどこかに出せば二人三脚を不戦勝できる……ってバカか!



『いやマジで出て!私と一緒に青春を謳歌……』
「こっぱずかしいのも嫌いなんだ、LBXと組んで走るんだな」

『それいいっ!』


閃いた。そうだ、この人ならLBXと組んで走ってくれるかもしれない。じゃあ私も我が子と組んで、仙道くんも同じようにすれば……!


『…でも仙道くんがぼっちなのは変わらないよね……』
「余計なお世話だ……あと、お前どうせろくでもないことを思いついたんだろうから聞かねぇぞ」

あれ、分かっちゃったの。
でもいい線行ってるから、なんだか諦めるのはもったいない!粘るんだ、私!



『今本当に欲しいものなんてないの!?
パーツとかコアパーツとかアクセサリーとか……!』

うわ、仙道くん引いてる。だが交渉決裂なんてさせない!クラスメートほぼ全員の願いでもあるから…!


「うるさいねェ、別にいらないって……」





「おーい!俺だけ種目決められてないんだけどさぁ」

後ろから声をかけたのは……クラスメートの、名前なんだっけ?あ、アホ毛だから風間くんだ。


『えっ、そうなの?………じゃあさ、特に出たい種目がなければねえ………』




交渉成立。仙道くんはそのまま運動会をサボって、私は風間くんと共にゴールテープを切った。

こんな青春がいいのに、なんで仙道くんは来なかったんだろう?……次こそは、修学旅行に行かせてやる…!

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