小説

□臆病な人
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周りから嫌われたくない
人を信じることができない
いい子にしていなかったら一人ぼっちになってしまう
ひとりぼっちになるのが怖い
周りから誰もいなくなってしまうのが怖い
だから自分を演じるしかないの
常に作り笑いをして、周りに合わせて生きていくことしかできない

私は臆病な人間だから

 
 私の名前笹本玲、髪の毛は茶色に染めていて、わりと派手な感じだ。校則で頭髪については禁止されていない為、自由である。私以外にも茶色に染めている人はクラスの三分の一程度だ。校則はあまり厳しくはないが、遅刻にはうるさい。欠席が多いのも注意される。学校自体が進学校のため、きっとその辺は厳しく取り締まっているのだろう。

「玲ー、今日一緒に映画見に行かない?ドラマでやってた『探偵ガチャポン』が映画になるんだって!!」
何それ?そんなドラマやってたっけ。ドラマなんて時代劇しか見ないから分からない。
「知ってる、知ってる!あの探偵映画面白いよね。今日は映画見に行けないんだ。本当ごめん。今週の日曜日なら空いてるけど」
 本当のことは言えない為、嘘をついてしまう。探偵ガチャポンがどんなドラマか知らないし、わからない。
「OK、じゃあ日曜日ね。あとあと行きたい洋服屋があるんだけどどう?」
「うん、いいよ。ちょうど洋服買いたいと思ってたところだったんだ」
 
 授業が終わるとすぐにレンタルビデオ店に向かい、『探偵ガチャポン』をすべて借りて家へと帰った。今日明日でビデオを見終わらなければならなかった。日曜日まではあと二日間しかないからである。
 
 こうして周りの話題についていく為に情報を仕入れている。洋服や本、映画、相手の興味のものを徹底的に調べて、嘘をついていることがばれないようにしている。ただ、相手のことは聞いたり調べることによって嘘をつけるけれど、自分のことはそうもいかない。出来るだけ自分の話題に向かないように、相手の聞き役をしている。

 

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