小説

□一章  人を信じるのはいけないこと?
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 さてどうしようか。
 体育館倉庫に閉じ込められてしまった俺はどうやってここから抜け出そうか考えていた。

 @誰かが助けがくるのを待つ
 A自力でここから抜け出す
 B諦めて寝る
 C秘密の抜け穴があるかもしれない

 @とCはあるわけがない。わざわざ体育館倉庫に来る人などいない滅多にいない。Cは言うまでもない。残るはAとBだが、俺の中では早くも諦めてしまっている。面倒くさいし、頑張れるほどのやる気もないからだ。このまま寝てしまえば、朝になって扉も開くだろう。

「ガサッ」
「!」
 何だ今の音は…人がいるとても言うのか。しかし、後ろを振り返っても誰もいない。気のせいか…? 
 体育館倉庫の中は静かすぎて妙に気持ちが悪い。風が吹いてきたのだろうかと外を見ても、木々が揺れている様子はない。
 ドンドンドン!
 まただ!やっぱり誰かいるのか。
「誰か助けて下さい!」
 今度ははっきりと声が聞こえた為、声の聞こえる方に行ってみるとその声は跳び箱の中から聞こえていた。
 恐る恐る一番上の跳び箱を持ちあげ、二つ目…三つ目…五つ目と跳び箱をどかしていった。
「すみません、助けて下さってありがとうございます。誰かが助けてくれるなんて思ってもみなかったです。神様っているんですね」
 すると跳び箱から女の子が外へ出てきた。彼女は少し声が高く、背の低い色白い少女だった。髪の毛は腰の長さまであり、二つ縛りをしていた。また礼儀正しく、いかにも騙されやすそうな雰囲気を醸し出していた。
「Dだったのか…」
「?」
「いやこっちの話。ところで、こんなところで何してたの?」
「かくれんぼをしてるんです。なかなか誰も見つけて貰えないんで、隠れる場所を捜そうと思ってたんですよ。跳び箱の中に入ったのはいいですが、出られなくなってしまって困ってたんです。本当に助かりました」
 
 今時、かくれんぼをする高校生なんているかよ。しかも現在進行形ってまだ、かくれんぼしてると思ってるのか。普通騙されていると気がつくだろ。
「ありがとうございます。それでは次の隠れ場所を捜さなきゃいけないので」
待て待て。いくらなんでも引き留めざるを得なかった。
「本気でかくれんぼしてるとでも思ってるか?」
 彼女は何の疑いもなく「はい、もちろんですよ」とにこやかに笑った。
「高校生でかくれんぼする人がいるわけないだろ。騙されてんだよ」
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