ただ目があっただけで
脅えた目をした奴がいた。
ただ煙草を吸ってるだけで
俺を恨んでいる奴がいた。
ただ1人でカウンターに座り
酒を飲んでいるだけで
媚びなきゃ殺されると
思い込んでる奴がいた。
ただ今夜の夕飯のメニューを
考えてるだけで「何を考えてるか解らない恐ろしい男」と俺を呼ぶ奴がいた。
歳をとった俺の擦り切れた手を
見て何人も殴った証と言う奴がいた。
ただ、寒さに凍えて上着のポケットに手を忍ばしただけで逃げて行く奴がいた。
路地裏を歩けば命を狙われて
昨日は泣きながら子供が俺に
石を投げてきた。
「ゼウス、おかえり。」
そして今、天使のような愛しいルナが俺に微笑んだ。
それでも、いいさ。
家に帰ってお前が待っていれば。
俺はもう孤独じゃない。
ゼウス=バルク