11/13の日記
01:04
目に見える全てを世界に例えて罵る
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ドアが大きな音をたてて開かれたと思ったら、血まみれの男が入って来た。血を見るのは比較的希で、(自分の手はなるべく汚したくないので)
自分でも目が見開くのがわかるくらい、驚いた。俗に言うギョッとしたと言うのは、この事だろう。
「どうしたんですか?」
男は何も言わずに血まみれのまま、自室のソファに乱暴に座った。
よく見れば血は全て、その男のものではない誰かの血だ。他人の血を浴びて良く平然としてられるものだ。
もし自分ならば、すぐにでも洗い流したい。血液は、あまり綺麗なものではない。
「ゴッド。」
話しかけても返事がないので男の名前を呼んでみた。男は目の前のテーブルの上にあるシガーケースを手に取り、その中の一本を取り出して口にくわえた。(シガーケースは、気まぐれな恋人物だ)それは、
まるで、いつもそうするかのように。
「…煙草吸えるんですね。」
もう煙をくゆらせている彼に当たり前の事しか言えない。良くリアクションが薄いだの、薄情だの、言われるが、泣いたり笑ったり大きな声をだすことが重要ではない。そう、目に見えることが全てではない。
「…軍人なのにオメェは煙草も吸えねぇのか。」
彼が、馬鹿にしたように、いや、ひねくれた子供が悪戯したみないな…いや、ざまぁみろ。そう言ったような顔で笑う。
「いつの時代の軍人ですか?」
「…さぁな。」
彼は煙を吐いた。彼の相棒のような若者も煙草を吸っているが、いつも彼はそれを煙たがっていた。
嫌いなんだと勝手に思っていたがそうでもないらしい。
彼は何の気なしに煙草を吸っている。
「アズベリー。」
「はい。」
彼が自分の名前を呼んだ。
この名前は本当の名前ではない。
もはや、名前とはモノを指す記号でしかない。そこに愛があったとしても理由はいらない。
「世界を動かす気分はどんな気分だ。」
「…」
彼の真意は知らないが、自分を真っ直ぐに見つめている。嫌味を言っている訳ではない。彼は時々、自分の中身をえぐりだすような事を言う。
「…世界を動かす?私が?」
「お前の一言で、国の未来が変わるだろ」
「…まさか、そんなこと私にできる筈がない。」
馬鹿な。自分は、一種の提案をしているだけで直接手を下してるわけではない。お前のように血で汚れたことなど一度もない。
「お前は、何もしてないって言いてーらしいけど、要は頭で考えたことを行動に移しただけだろ。…それが、自分の手じゃないだけだ。」
お前に何がわかる。
「俺は今日、男を殺した。頭がイカれた薬中だ。その男、俺になんて言ったと思う?」
どうして、どうして…この男は俺の気を揺るがすようなことを言うのだろう。
「…世界を動かす気分はどんな気分だ。ってよ。別に俺は世界なんて動かしちゃいねぇ。だが、アイツの世界を消したのは俺だ。」
彼はそう言って笑った。
今度は力なく笑う。要するにこれは、「お前と俺は同じようなところがある」と言いたいらしい。
そして、今日に至って胸を痛めてる。つまり、弱音を吐くと言うことだ。
「…ゴッド、大丈夫です。どの世界にだって必ず終わりがやって来る…私達の世界にも。」
彼は小さな声で「そうだな。」と言った。泣いているんじゃないかと思った。理由は、自分も泣きたくなるくらい、気持ちがわかるから。
いつから私達は
どこで道を間違えたのか
そんなこと…今さら、わかるわけもない。
アズベリー&ゴッド
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