12/16の日記

21:48
あいのうた
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桜の木の下で、淡い日だまりのような髪の毛がふわふわと舞っている。
この世とも、あの世とも、違う。
別の世界に立っているかのように彼女は、異質で、透明で、儚い存在だ。

薄桃色の花びらでできた雨の中で、何か懐かしい歌を歌っている。
異国語の歌詞が懐かしいはずもないのだけれど、俺は、その歌を何度も聞いたことがあって、これは彼女の気に入っている歌だ。
彼女の優しい歌声は、ひねくれてしまった俺の心をほどいてくれた。
いつも、そうやって、そこにいてくれたじゃないか。
ずっと何も変わらないと思ってた。
貴女が、そうして俺に微笑みかけ、俺の名を呼ぶ。

「…アッシュ」

貴女は、宝石の色なんかじゃない、例えば、そう。穏やかな早春の清みきった空のような透き通る青い目。黒い瞳の俺とは対局にいると見せつけられたような青さ。
それは、儚くて、寂しくて、だけど貴女は、それを人の常だと言うのでしょう。
だけど、だけど…俺は、


「………ねぇ、さ、ん…」



『おろかなのは、わたしなのか、おまえなのか、ただなにもできないのなら、わたしははなびらになって、おまえのほおにふれたい。そのきれいなしずくが、いえるまで、ただ、ただ、そばに。ただ、ただ、そばに。』




春の夜の夢のごとし。


アッシュ=モガイド=アリフェナ











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