頂き物
□観佑さまより小説
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観佑様より、勇吏小説です。
この腕(カイナ)に抱け
お前の姿を再び見かけた時、駆け寄って、抱き寄せて、昔言えなかった言葉を気持ち悪いくらい押し付けたくて……
離れた時間はこんなにも人を成長させるものなのだろうか
離れた時間はこんなにも焦がれるものなのだろうか
“捨てたくせに”
“叫んだ言葉に背を向けたくせに”
“サイテー”
“信じてたのに、裏切った”
俺の中の吏人が、泣きながらそう叫ぶ。
伸ばした手を振り払って、吏人は涙で潤んだ目で俺を睨んで、かつて俺がそうしたように背を向けて去っていく
追いかけようと足を踏み出せば、目の前に真っ黒なあいつが立ちはだかり、足元ががらがらと崩れ落ちる
そんな夢を何度見ただろう
突き放されるのが怖かった
嫌われるのが嫌だった
苦しくて、張り裂けそうで、自分自身を抱きしめた
目が覚めると年甲斐もなく涙を流した
「オレはあの時からユーシのサッカーをずっと続けて来た!」
「ユーシを認めて…日本一にもした!」
「無駄なんか一つもねェ!!」
泣
く
想いが溢れて止まらない
胸が熱くて、視界が揺らぐ
「あ、…ぁっ…」
いつまでそうしていたんだろう
きらきらと橙に空が、地面が世界が染まる
夢を語ったあの時の光景を思い出して、泣きそうになる
「ゆー……し……?」
ぽつり、と前の方から聞こえた自分の名前に顔を上げたら、十メートルほど先に、夕日にとける赤茶の…髪……
本能的に、後の壁に張り付いた
だって、彼はここにいちゃいけない……
「ユーシ、ユーシ、ユーシ」
走って近寄って来て、俺の存在を確かめるように名前を呼ぶ
「ユーシだ…」
……吏人……だ
“背を向けたくせに”
伸ばしかけた手は、
「ユーシ…なんで、ここにいるんだよ」
「…あ…あぁ……」
「もしかして…オレ達の試合…見に来てたのか?」
「いや…」
「そっか……あ!オレ今日シア…あ、じゃなくて…最強になる第一歩を踏み出したんだ!ユーシのサッカーを続けて…それで………ユーシ?」
言葉を止めた吏人の顔が、不安そうに俺を、見る
「なんで……」
「ん?」
「なんでまだ、俺のサッカーを続けてる?」
「え…」
「俺は、」
抱きしめるより先に、言うつもりのない言葉が、口をついて出る
「俺は、お前に背を向けた、俺のサッカーを押し付けるだけ押し付けて、吏人の前から去った。吏人に軽蔑されて、嫌われて、憎まれても仕方ない…の……に……」
俯いた目線の先のコンクリートに、ぽたりと黒い染みが一つ広がった
「吏人?」
思わずあげた顔。そこには口を引き結びながら瞳に涙を溜めた吏人の顔。まるで……
「ばか…!年取って、女々しくなったんじゃねーの…」
「り「おれは、ユーシが嫌いならサッカー続けてない!ユーシは俺にサッカーを教えてくれた。サッカーはオレとユーシを繋ぐ唯一の大切なもので、オレの理由で、サッカーはもう生き甲斐で、なんでユーシが勝手にオレに理由をつける!オレは、サッカーが好きで、ユーシのサッカーが好きで、ずっとずっとユーシが大好きなんだ!それだけじゃ駄目なのかよ…!」
はっ、とした。
ああ、俺が思った以上にこの子は成長している。俺が、感じた以上に、強くて優しくて、こんなに美しい
信じてくれたこの子を、俺の意志が吏人の中に俺が吏人の始まりで、今の吏人を
色んなものが吹っ飛んで、まとまらない考えの中、ただ一つ
「吏人、吏人…!」
「わ、ユーシ、苦しい…っ」
手を伸ばして、この腕にお前を抱き寄せて、昔言えなかった言葉を…!
「好きだ、俺もお前が好きだよ、吏人」
「あ、……おれ…も……すき」
離さない、離してやるもんか!この愛おしい子どもを
ずっと、ずっと…!
佐治(おーい、あいつら、公衆の面前なんだけど!)
柚絵(吏人くん、良かったね…!ユーシさんに会えたのねっ)
心亜(キイィー、リヒトがユーシさんに…!)
及川(ちょ、なにこれ、ボク達必要!?)
『空を架ける虹の橋』の観佑様より、相互リンク記念で頂きました。勇吏ハスハス(*´Д`)
女々しいユーシが最高に可愛くて…!!みんなの前ではかっこいいのにユーシの前だと
口調が5年前っぽく幼くなってしまうリヒトとか最高に悶えます。一生懸命かわいい><
転載許可までありがとうございました!改めましてこれからもよろしくお願いいたします〜!