End of stray lovers

□Ignite story
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「どこだろう、シンタロー…」

さすがに軍服は熱すぎたなぁ…と少しだけ後悔した。

「あ、あんなところに家が…
もしかしたら、シンタローの居場所知ってるかも!」

可愛らしい外装の民家を見つけ、
もしや、と高鳴る胸を押さえながら、
扉をノックする。

「…うーん、お留守かなぁ」

「ねぇ!パプワくんたちなら、
遊びに行っちゃったみたいだよ!」

「え?」

振り向くと、足元に小さな、生き物が…

「か、かわいいー!あなた、しゃべれるの?」

「うん!おねえさん、だぁれー?」

「ん?私はね、名無しさんていうの。
あなたは?うさぎさんかな?」

「ちがうよー!カンガルーネズミのエグチっていうの!」

ぴょこんと生えた兎のような耳と、
長いしっぽ、とてもかわいらしい生き物だ。


「エグチくんていうんだ!パプワくん、ってお友達?」

「うん!友達だよ!チャッピーと
シンタローさんも友達!」

「シンタローさん?」

「シンタローさんはねぇ、最近この島に来たんだよー!
おねえさんシンタローさんと友達?」

「私はね、シンタローのいとこなの」

「へぇー!じゃあシンタローさんを探してるのー?」

「うん。まぁ、
ここで待ってれば来そうだし、待ってようかな。」

「たぶんそのうち帰ってくるよ!それまで遊ぼうよ!」

「え?う、うん、いいの、かな?」

一応仕事中だけど、まぁ、シンタロー探すのの一環だし、いいよね。






しばらくして――――――…


「ん?なんか、さわがしいね?なんかあったのかな」


しばらくエグチくんと、その友達とお話したりして
遊んでいたら、なんだか聞き覚えのある叫び声が聞こえた。

「なんだろうねー?」

エグチくんも不思議そうに首をかしげる。


そして間もなくガガガ、と音の割れた無線が入る。

[名無しさんちゃん!
私たちはもうこの島から撤退する。
そこでなんだが、
名無しさんちゃんは残ってもらい
シンタローの所に行ってもらって、
秘石の事、なんとか聞き出しておいてほしい。
必要なものはパプワくんという
この島の住民の家に置いて来たから、
そこでお世話になってくれ。以上!!]

ぶつ!と切れる無線

「な、なんですかそれ!!?
総帥!?ちょっと、総帥ーーーっ!!」

無線を入れて叫んでみたものの、
空を見れば飛行船が飛び立っていくのが見える。


「あーおいていかれちゃったよ…」

はぁ、とため息をついてエグチくんたちに苦笑いする。


「それならパプワくんの所に行ってみなよ!!
きっとシンタローさんたちももう戻ってきてると思うから!」


「うん、行ってみる。ありがとう、楽しかったよ」

「おねえさんもありがとう!!また遊ぼうねー!!」


みんなに手を振り、さっきの家へ向かう。



「…………で、でも…
どうしよう…なんて言えばいいんだろう…
久しぶりー!とか…
いやいや、不自然すぎるかも…」

なんて悶々としていたら
すぐに家の前についてしまった。


どどどどうしよう…!!緊張してちゃったよ…!!
ノックしてすぐシンタロー出てきたらどうしよう、
どんな顔すればいいんだろう?
あぁぁ…!!もう、緊張して手が震えて来た!!


ガチャ!!

「なんだぁ?誰かいんのかぁ?」

「きゃぁあっ!!」

急に扉が開いたせいでびっくりして飛びのいてしまった。
扉を開けたのは、黒くて長い髪、凛々しい顔、低い声の男性。




「あ!わ、し、シン――!?
あ、あああの!ひ久しぶり!じゃなくてじゃなくて…!!
あの、あの!!」

もはや思考などない言葉が飛び出す


「名無しさんか!?お前、どうしたんだよ!!
あ、親父と一緒に来たのか?
でも親父たちさっき帰っていったけど…」

「あの、お、置いていかれちゃいました…」

「はぁぁ?置いて行かれた!?
あの馬鹿親父、何してんだよ…
ま、立ち話もなんだし、入れよ。」

「う、うん…」


久しぶりに会ったシンタローも、
やっぱりやさしかったです。
えへ。


「シンタロー、そいつは誰だ?」
「わん!」

ちゃぶ台の前でちょこんと座っている小さな少年と犬。

「こいつは俺のいとこの名無しさん。
さっきのあのバカ親父に置いて行かれたらしくてよ。

ああ、名無しさん、こいつはパプワそれにチャッピー。」



「名無しさんです。
よろしくね、パプワくん、チャッピーくん。」

「おお!よろしくだぞ!
お前はシンタローのいとこなのか?」

「うん、そうだよ」

「じゃあ、もう名無しさんとは友達だな!」

「友達?」

「ああ!今日からお前と僕は友達だ!それにチャッピーもな!!」

「わん!」

ふ、と何かが頭によぎった。
少し頭がズキンと痛んで、すぐに収まった。


「そっか!友達!」

「お前どうすんだよ、
親父に連絡取って迎えに来てもらうのか?」

いつのまにか、台所で何かトントン、と料理をしているシンタロー

主婦?


「んん…でも伯父さまから
さっき無線でシンタローを説得してくれって言われちゃって、
たぶん、迎えには来てくれないと思う…」

「お前それ…俺に言ったらダメな事じゃねーのか?」

楽しげに笑うシンタロー
その横顔に、また、いつもとは違う意味で、胸が締め付けられた。
こんなに自然に笑うシンタローを見たのは、本当に、何年ぶりだったろう。



「あ!そういえば伯父さま、必要なものを
ここに置いていったって言ってた」

「あの親父いつの間に…
しかもあいつ計画犯だな、絶対…」


きょろきょろと探してみると、玄関のわきに、
大きめのリュックが置かれていた。


「もしかしてこれかー?」

パプワくんが軽々とリュックを持って来てくれる。


「ん、手紙が入ってる。シンちゃんへ、だって。
はい、シンタロー」


「んだよ、あの親父…何々?

拝啓 シンちゃんへ
急な来訪、驚いてくれたかな!?(笑)
私は今日は帰るけれど、名無しさんちゃんは残ってもらうことにしたから、
パプワの所でお世話になると思うよ。
まさかシンちゃんも、可愛いいとこに野宿はさせないよねー(苦笑)
まぁよろしくたのんだよ、また行くからね。
パパより
敬具
はぁ?なんだあのクソ親父!
絶対名無しさんを置いていく予定だっただろこれ!!
ん?なんだ?最後にまだ何か…えーっと?

PS.
そうそう、名無しさんちゃんの事だけど、
知ってるだろうけど、ハーレムが溺愛してる愛娘だから、手は出さないでね。
命の保証ができないからさ(笑)
だから間違っても寝込みを襲ったり、しない よ、う、に……」


シンタローの顔が真っ赤になっていく。
PS.からあとが声が小さくて全然聞こえない。

「なんだ?続きがあるんじゃないのか?」

パプワくんが不思議そうにシンタローを見つめる。

「ね、ねぇよ!!
PS.なんて書いてなかった!!気のせいだった!!」


手紙を粉々に破ると窓の外へ投げ捨てる。


「ま、これから名無しさんも僕の家で住めばいい!
行くところはないんだろう?」

「うん、お言葉に、甘えようかな。
他に行くところが、ないし…」

「ま、まぁ名無しさんなら
他のやつと違って信用できるし、いいんじゃねぇか?
それに名無しさんはあのクソ親父のせいで
迷惑してるわけだしな」

「よろしくお願いします!」

ぺこ、と頭を下げて、上げてから気がついた。


あれ、これ、シンタローと
一 つ 屋 根 の 下・・・?





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