Mix sketch

□Nursing Magic!!
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昨日の悪天候とは
打って変わって、

パプワ島は
空は雲一つなく
風は心地好く吹き渡り
穏やかな日だった。




あ…ヤバい……
頭グラグラする……

喉も痛いし、
目眩もするし、
顔が熱くて、
体は寒い。




ああ………
風邪ひいたかな…






Nursing Magic!!











「名無しさん!ほら、
ぼけーっとしてねーで
リキッドと
夕飯の材料取って来い。」



こんな私の体調なんて、
知った事か。
と言わんばかりの
鬼姑からの命令。



「なんか、面倒くさい。
断固、
ボイコットいたします。」

そういって、
床にだらける私を横から
足でこずく。

結構痛い!!ちくしょー




「タダ飯食らいが、
何ボイコットなんて
してんだ。
ぐだぐだ言ってる暇あったらさっさと行け!!」


ああ…
段々顔が鬼になってく……
そろそろ行かないと、
本格的に怒られるな…



ここで、体調が悪い。と
主張してしまえば、
シンタローだってさすがに
休ませてくれるだろう。

だが、
言えない理由がある。

言えない理由。


昨日の土砂降りの中、
シンタロー達の注意を聞かずに外に出て、
ずぶ濡れで帰って来た。
結果今日になって発病だ。
それみたことか。と
散々罵られながら、
家で休む事になるだろう。
そんな休まらない休みは
絶対にいらない。



と、言うことで。

酷く怠い体を起こし、
立ちくらみと戦いながら、玄関に向かう。



「よーやく、
行く気になったか。」



「………このブラコン馬鹿め」

仕返しと言わんばかりに
聞こえるように
呟いてやった。


「てめぇ、今……
何か言ったか…?」

「うは、ヤバいヤバい…
行ってきまーす!!」



どんどん
般若に変わる顔を確認して逃げるように家を出る。





「名無しさんさん、
遅いっすよー!!」

背中に
大きなカゴを背負って、
人なつっこい笑顔で
リキッドが待っていた。


「ごめんごめん。
シンタローに喧嘩売ってた。」

「い゙っ!?
何やってるんですかー…
俺、
仲裁に入りませんからねー命いくつあっても足りないくらいだし…」



リキッドがはぁ、と
深刻なため息をついて
森へ歩き出す。


外の風邪に当たって、
少し調子も良くなった。

これなら順調に治るだろう


「全くさー…
シンタローったら
私の事全く女として
認識してないよ。
あれは。」

「そーっすか?
心なしか、
名無しさんさんには
優しい気がしますけど。」

「どこが?あんな
俺様殿様スタイルなのに」

「どこがって聞かれると困っちゃいますけど…

ま、でも名無しさんさんは
シンタローさんの
そんな所が
好きなんでしょ?」


「ま…まぁね!
と、所で
どこまで行くの?」

顔を赤くしながら、
話をそらす。

なんで
あんな男に恋したんだか…

「この上です。」


「………………」



リキッドが指さしたのは、
断崖絶壁、その崖の上。


「…ちなみに
何取りに、いや
捕り行くの?
ポニョかなにか?」

「この崖の上にある、
すっげーうまい木の実を
取りに行きます。」


「他にもあるじゃん。ほら」

適当な木に生えた実を
指差す。


「あれじゃ駄目なんです。
てゆうかシンタローさんの
ご所望品なので、
変更不可なんす。」

「だからって…
この崖を登れっての?」

見てるだけで
具合が悪くなるわ。



「ここからが
一番近いんですよ。」

そういってよいしょ、と
崖を登り始めるリキッド


来てしまったものは
逃げようもないだろう。

私も体に鞭打ち、登り出す







「大丈夫ですか?
名無しさんさん」

「ん、大丈夫。」


やっとのこと
中腹まで登ったものの、
ここに来て
熱が上がって来たようだ。
頭がぼーっとする。




やっぱり家で休んでた方がよかったかな…

でもきっと
呆れられるよなぁ…





「ぶはっ!やっとついた!!
さ、名無しさんさんも
あと一歩ですよ!」


そう言って、
上から手を貸すリキッド

「あーどうも。
―――…あ。」



パコン、と軽い音がして、手をかけた石が欠ける。

熱で言う事を聞かない体で回避などできる訳もなく、
重力に引き寄せられる。


「名無しさんさん!!!!」



リキッドが手を
目一杯伸ばして来たが、
紙一重、届かない。

文字通り
真っ逆さまに落ちて行く。



あーそれもこれも
シンタローのせいだ。

帰ったら文句の一つでも
ついてやろうじゃないか。
帰れたらの話だが。












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