Mix sketch

□Dande Lion
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俺が総帥を継いで、1年。
あいつに出会った日から、俺は少しずつ、
変わっていった。



Dande Lion









「「お疲れ様です!総帥!!」」


びし、と
強張った顔持ちで、
団員達が敬礼する。




ああ、これがいやなんだ。

1年間がむしゃらに、
脇目も振らずに働きすぎた
そのせいで、
団員達や、家族までも、
俺に怯えてしまっている。


「俺は部屋に戻る。
お前らも戻っていい。」


こうして部屋に戻って
少しの睡眠時間を取って、
俺の一日は終わる。

こうやって毎日が
始まって終わる。










―――――…


「たく…っ、
なんで自販機がこんな
遠い所にあるんだよ」


朝、長い廊下を通り、
自販機の前で毒づく。

いつもなら自室で
いれるはずのコーヒーだが

コーヒーメーカーが壊れて仕方なしに
自室から
自販機を探して来た訳だ。

あまりにないもんだから
今日から廊下1m置きに
自販機設置してやろうかと思ったじゃねーか。




小銭を入れて、
コーヒーのボタンを押す。


「…………出てこねーな」

何度ボタンを押しても
反応なし。


「…だぁーっ!!
壊れてやがんのかっ!?」



ガンガンと
怒りに任せ
自販機を蹴りまくる。



「コラァ!!
朝から暴れてんのは
誰よッ!!」


バァンッ!!
と自販機から
一番近い部屋の扉から
団服を着た女が出てきた。


「あ?なんで女が…
ああ、そういや
今年度から女子団員
入れたんだっけか…」


これ以上ガンマ団が
ガチホモ集団と
言われないための対策だ。

「あなたねぇ!
自販機蹴っ飛ばしたって、売り切れな物は
売り切れなのよっ!?」

すごい剣幕で
自販機を指さす女。



「あれ?あなた…
もしかしてシンタロー総帥?」

はた、と
気がついたように
目を丸くする女。


まぁ、今は軍服着てねーし髪だって束ねてる。
しかもまさか総帥が
自販機に
コーヒー買いに来る
なんて、考えも
しなかったんだろう。


「そうだけど」

どうせコイツも
すげー謝って、
逃げるように
戻っていくだろ。



「あら、それは失礼。
それにしても全く……
総帥ともあろう人が
自販機に八つ当たりなんて情けないですね。」


全く詫びる様子もなく、
それどころか
俺に向かって、
総帥に向かって、
喧嘩売って来やがった。



「んだと?
仕方ねーだろ!!
この自販機が
壊れてやがるから…!」

「だーかーら!!
さっきも言いましたけど、そのコーヒー、
売り切れてるから、
何度ボタンを押そうと、
いくらお金入れようと、
出るはずが
ないでしょう!!」


「あ、売り切れか」

よくよく見れば、
コーヒーのボタンが
赤く光っていた。



「それに…
その自販機からこっち側、女子寮になってるんで、
あんまり煩く暴れると、
総帥だろうが
反感買いますよ。」



ああ、そういや
そうしたんだっけな。

「……悪い」


こっちから謝るのは
釈だったが、
一方的に俺が悪いのは
明らかだった。

女も、素直に謝った事に
少し驚いた顔をしていた。


「いいえ、
気がつかなかったのなら
仕方ないです。

でも、コーヒーなんて、
こんな
自販機のじゃなくても、
あるんじゃ
ないんですか?」


「部屋のコーヒーメーカーが
ぶっ壊れた。」

「あらら…
それは災難……

安いコーヒーなら、
すぐいれられますけど、
飲みます?」


「コーヒーが飲めれば、
なんでもいい」

わかりました。と
女は部屋に戻って
コーヒーを
入れに行こうとする。


それにしても……



「なぁ!」

「はい?なんですか?」


足を止めて
こちらに振り向く。


「変な事聞くけどよ、
お前、
俺の事怖くねーの?」


女は少し怪訝そうに
首を傾け、悩んだ後
すぐに口を開く。



「いえ、全く。

昨日まで噂に
聞いていた総帥は
とても怖そうでしたけど、今となっては、
全然怖くないですけど?」


不思議そうに返答する女


「…そうか」



そう返事すると、
女は部屋に戻った。

なんだか久々に、
こういう奴に
会った気がする。

少し懐かしい気持ちになりつい口元が緩む。
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