End of stray lovers

□New lives
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昨日の夜は歓迎会で盛り上がり、
そのまま眠ってしまった。

こんなふうに遊んだの、いつぶりだっただろう。

シンタローがこんなにも
屈託なく笑えるようになった理由が、
少しわかった気がする。

やっと暑苦しいスーツを脱いで、
気も少し楽になった。


…まぁ、それはそうと。
いま私は、大きな壁にぶち当たっている。


「そうじゃねぇ!
こうやって小さく刻んでだな…」

今日の朝食から、
料理を叩き込まれているところだ。


「う、うん。こう?でしょ?」

「そこはちゃんと形を揃えて!」

「は、はい」

「じゃあその鍋を火にかけて」

「うん」

「で、さっき切ったやつを入れて」

「はーい」

「違う!肉を先に入れるな!」


どうも私には、料理の才能が皆無らしい。
そう自身では悟ったものの、
シンタローは許してくれなさそうだ。


なんとか朝食づくりを終えて、
疲れきったところで食卓に並ぶ。


「名無しさん、よくがんばったなー!」

パプワくんが褒めてくれる。


「なかなか前途多難だけどな」

「すいません…」

「少しづつやっていけばいいさ!」

「はーい…」







――――…


朝食を食べたあと、洗濯を手伝って
島の案内をしてもらった。

一通り回ったあと、
浜辺で休憩する事になった。

シンタローは浜辺で横たわり、
ふーっと息をついた。
その隣に座って水平線を眺める。


「大体全部回れたよな、どうだった?」

「本当すごいね、
なんだかバカンスに来たみたい」

「そういやお前、
なーんかいっつも働いてるよな。」

「そんなわけじゃないよ」

まぁ仕事柄、
はっきり休みなんて取ることはないけれど

「ま、ちょっとした休暇ってことで
いいんじゃねぇか?」

「そうだねー」


本当はシンタローを説得して、
なおかつ秘石を探さないといけないという
『仕事』なのだが、
まぁ、あれもマジック伯父様は
本気で命令を出したわけじゃない。

あの人の考えは計り知れないのだ、
考えるだけ無駄だろう。

純粋に休暇をもらったと考えることにした。



「にしてもよ…
あの秘石にそんな力があったなんてな…
名無しさんは知ってたか?」

「んー…なんか…
普通の石じゃないっていうのは知ってたけど…
そんな都市伝説みたいな話は聞いてなかったなぁ」

「だよなぁ…でも…
この石の能力を解明できれば…

俺は大金持ち&コタローと大ハッピー!」

コタローはシンタローが溺愛の弟だ。
マジック伯父様の手で、
どこかにつれていかれた最愛の弟
そんな弟を取り返し、
どこかで平和に暮らすのがこの人の夢

そんな夢を語り、輝いた瞳と決意の横で
パプワくんとオットセイが石で遊んでいた。


「粗末にしないで我が家の家宝ッ!!」

秘石を取り戻しチャッピーの首輪に戻す。


「さ、もうそろそろ戻るか!
昼飯の準備もあるしな!」

「うぐ…」

またあの地獄の料理教室が始まるのか…











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