4seasons

□あなたにとっての
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 こういった院内に置かれた喫茶店で、職員がランチで利用するというのは、結構珍しいのではないだろうか。




 元々私はカフェをやりたかった。それが夢だった。



 そのつもりで色々資格を取得し地元へ戻り、お金はまだまだ足りなかったけど一応ひとりでもなんとか経営は出来るくらいには準備していた。


 そんな時に、この病院の喫茶店での募集を見かけた。


 条件的には悪くない、むしろ今まで働いていたカフェよりも給料も良かったし、何しろ潰れる心配もない。

 当然そんな募集には多数の応募があったらしい。



 製菓学校を卒業しカフェに何年か勤務経験もある、栄養士や調理師免許を持った私が、この喫茶店での採用を断られるはずがなかった。


 結構な倍率を突破した私は、晴れてこの喫茶店の店員となった。



 カフェを経営するという夢は少し先送りにはなったけど、お金を貯めるにはいい期間になりそうだと思いながら働いていた。



 実際、予算に限度はあれど材料費は充分にあり、従来のメニューの改善をしたり新たなメニューを提案したり、私は結構楽しんで働いていたと思う。

 大本に市と病院がいるのでわりと職員の希望も通りやすく、職員が飲みたいと思うスタバのような本格的なコーヒーショップに負けないくらいの種類のドリンクメニューを楽しめる程度には、充実したデリバリー可能の喫茶店にはなった。


 その分作り手の私たちの作業は増えたけど、普通のカフェだってこれくらいはしている。

 私は苦だとは思わなかったけど、今まで適当に働いていたパートのおばさんは不服のようだった。


 私がメニューごとにマニュアルを作り、レシピが出来上がっていてその通りに作るだけでいいとしても文句が絶えないのがオバサンという生き物らしい。



 それでも、喫茶店としての役割は十分に果たすいい店になったと思う。



 そういった理由から、院内へのデリバリー…出前も従来よりかなり増えたらしい。


 医局で大きな会議がある時は、人数分のコーヒーのデリバリーオーダーが入ったり(その場でサーヴするのでこのオーダーは私以外の誰もが嫌がってはいたけど)、医局にいる医師へ食事の出前をしたり、仕事が増えた分お給料が目に見えて上がるわけではなかったけど、その分人件費を上げて貰えたので今までおばさん二人と私で回していた勤務がバイトの大学生の加入で少し楽になった。



  
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