4seasons
□冴えない男
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冴えない男
世間的にも、この職場でもそうだが、一般的な新年度を4月に設定している企業は多いと思う。
例に漏れず公務員である自分も年度末は3月末だ。
地方公務員で大きな転勤こそ無いにしろ、移動となれば一通りの引き継ぎは必要で、動かないデスクとパソコンの中身を片っ端から片付けていくのを引き継ぎと同時進行で行うとなれば、それなりに忙しくもなる。
そして、移動先の仕事が必ずしも自分の希望した業種とも限らない。
初年度からずっと、どう考えても自分には向かない税務課での仕事を続けてきて、この度晴れての移動となった。
正直に言うと、もう数字を見る事すら億劫だったので若干の出世コースからの脱線の感は否めなくても、充分に良いことに思えた。
引き継ぎ作業は想像以上の量で、通常勤務時間に行う窓口作業の半分を同僚に賄って貰い、チクチクと厭味、そして溜め息を盛大に頂いたが、無責任にデスクの中に3年分の申請書を貯めたまま提出せず、蓄積した書類をそのままに無断欠勤とともに退職していった元同僚よりは、遥かにマシだと思って貰いたいくらいだった。
あの3年分の蓄積された書類の後処理で税務課の職員は3か月間毎日残業をし、当時の課長は胃潰瘍で入院をした。
あの時を思い出してよ、俺なんて窓口任せるだけだよ?全然マシでしょ?、と言って笑うと、その話はするな、と真顔で返された。
あの元同僚は、今一体どこで何をしているのだろう。
それもどうでもいい話だ。