4seasons
□あなたにとっての
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あなたにとっての
市立病院の中にある、食堂と喫茶店の中間にあるような中途半端な店舗。
それが、私の職場だ。
不思議とどこの病院へ行っても、病院の規模にかかわらず似たような、食堂には物足りない喫茶店がある。もしくは、存在そのものがないか、のどちらかじゃないかと思う。
この喫茶店は元々は患者や見舞客用に設置されたものらしいけど、病院内での経営方針の流れで職員用の食堂が廃止となったあたりから、この喫茶店の意味合いが変わってきたようだ。
ここでのメニューは軽食しか取り扱いがないのに、職員食堂を廃止にしたあたり当時の院長や市の職員は随分と思い切ったものだ、と思う。
そもそも職員用の食堂は、利用率が悪かったらしい。
なので、だったら経費削減で職員用の食堂は無くしましょうという話になり、一時は元々喫茶店のあった場所にスタバを設置しようという話も上がり、職員は両手を上げて喜び浮かれたそうだ。
しかし、フランチャイズ化の際に病院側と大本の間でうまく話し合いが進まず、近所にスタバがなかったおかげからか、市から「病院は娯楽施設とは違う」との反対を受けて、スタバという職員の夢は流れたらしい。
スタバのある病院は実際に存在するし珍しくもないというのに。
かといって職員用食堂の利用率は相変わらず低く、コスト削減が避けられない状況に変化が見られない為、この際職員は入院患者と同じ食事を有料で自由に医局や詰所、休憩室で取りましょう、という市と病院の決定事項に院内に勤務する職員が大騒ぎしたそうだ。
そもそもこの計画には穴があり、日々外来患者や入院患者、急患に接している職員が、決まった時間までに食事の要・不要を提出する事は出来ても、出来上がった時間に食事に入れるとは限らない。
配膳そして洗浄と院内の職員にも流れがあるのだ。
救急車で運ばれてくる急患も日々訪れる病人も、職員の休憩を待てない場合が多いのは、医師や看護士には目に見えていた。むしろ、彼らは普段から定刻通りに休憩に入れる事など滅多にないのだから。
そこで、だったら希望者以外は院内の売店・喫茶店もしくは近所のコンビニを利用しましょう、という事になり、従業員用食堂騒動は食堂閉鎖で幕を閉じ、元々お弁当持参の看護師や妻帯者は従来のまま、喫茶店は院内の小さな売店で昼食を確保出来なかった、忙しく食事を調達出来ない独身の医師や技師という一部の関係者と、見舞い客の為の店に生まれ変わったそうだ。
それも私がここに来る前の話。