テニス/短い夢2

□俺にだって苦手なものはある。
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今俺はうっかり遊園地なんかに来ている。

しかも、謙也さんなんかと。


別にどっちも嫌いなわけやない。

ただちょっと、来た場所と一緒にいる人がミスなだけ。


「光ー、早ぉ!」

「謙也さん、せっかちすぎや、もうちょっとゆっく…次これ乗るん?」

「おん」

「謙也さん一人で乗って下さい」


目の前にあるのは俺の大嫌いなジェットコースター。
謙也さんとは絶対一緒に乗りたない。


「なんや光、怖いんか?」

「………」


謙也さんの言葉に否定も肯定もしなかった。


「なんや、光にも苦手なことあんねんなぁ」

「別、に苦手なわけや…」

「ほな一緒に乗るで。苦手なわけとちゃうんやろ?」



終わった。

というかどうしよう…

あかん、マジであかんねん。


「光やっぱ怖いんやろ」

「へ、平気っすわ。こんなん」

「泣いてもええからな」

「誰が泣くか」



そんなことを話していれば俺を地獄へ導くマシンがもう目の前にあったりする。


マシンに乗り込みウキウキ気分の謙也さんが憎い。


安全バーが下がって来てマシンは天空へと上って行く。


あ、あかん、ホンマに泣くかも。

下へとマシンは急降下。

声も出せんうちにマシンは止まった。











「…っ、えぐっ…ひっく…ぅう…」


泣いてもうた。

いや、マジで怖かったんや。


「光にも苦手なんあるんやなぁ」

「う、うっさっ…ひく…すわ…ひっく」

「あぁもう泣くなや」


謙也さんは自分のパーカーの袖で俺の涙を拭ってくれた。




おわり

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