テニス/短い夢2

□大好きでした
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「光、明日空いとるか?」

「すんません、ちょっとしばらく用事が…」

「そか、なら仕方ないな」

「すんません」



最近、自分の恋人、財前 光の付き合いが悪い。

まぁ、理由は解ってんねんけどな…。







―――――2ヶ月前。


「ひか…る………?」


大好きな後輩兼恋人を見つけ声をかけようとして止めた。


「なんで……?」


財前は、一氏とキスしよった。

悔しかった。

自分にも見せないような顔であいつに笑うんが。


俺じゃダメやったん?

何がダメやったん?

なんも解らん。

解らんねん。



吐き気がした。

財前にやない。

一氏にでもない。


この、運の悪い状況にや。


まるで、無重力にいるみたいに頭がぐらぐらする。
冷や汗がでる。
足がすくむ。
心臓が壊れそうや。



「光は、俺じゃダメなんかな…?」


独り言を言い、走って教室へ戻った。

止まれ心臓。

その日から今日まで俺は、いつもと変わらないように、財前に接してきた。

けど、明らかに俺との距離が変わっていった。

近くて遠い。

矛盾した距離が苦しくする。



「光、ちょっと大事な話しがあんねんけど…」

「なんですか?今忙しいんで三秒以内30字で述べて下さい」

「あほか、無理に決まっとるやろっ!」

「所詮、謙也さんなんてそんなもんですよ」

「なんやとっ」


普通に話せる。

これだけで十分や。

財前ごめんな?



一年前、告白したのは俺やった。

財前はもともとノーマルな人やから、よく俺と付き合うてくれたと思う。

不安だらけの毎日やった。

友達の域で満足やった。


せやから、友達に戻ろうや。

「本題にはいんで?」

「……?」


軽く咳払いをして、話しだす。


「財前、別れよう」

「えっ?」

「ええねん、お前が幸せなら」

「ちょ、話し読めへんねんけど??」

「お前、好きなやつおるやろ―??」

「……!」

「なんも言わんでええで光。今までありがとな」

震えるな、声。

零れないでくれ、涙。


「ちょっとでも俺を思うてくれてありがとな、財前。サヨナラ」



財前と反対方向を向いて、俺は教室へ向かおうとしたとき、財前が大声で叫ぶ。



「謙也さん、ごめんなさい!」


なんでお前が泣くねん。


「大好きでしたっ」


そんなんずるいで財前。


「おぉ、幸せにな、財前」


「ありがとうございます!」



俺は少しでもお前のこと幸せに出来たやろか?


お前が笑ってくれんならだれと付き合うてもええねん。


「ありがとな、財前」


聞こえない声でポツリと呟き、教室へと俺は向かった。


ありがとな、短い間でも、好きになってくれて…

幸せやったで…



   バイバイ、財前。



サヨナラ――――
   俺の初恋――。



おわり

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