テニス/短い夢2

□PIERROT
1ページ/3ページ


お前さんは俺の言葉に耳も傾けない。

まるで耳の取れた道化師のようじゃ。


お前さんはいつも作られた言葉に笑顔を乗せる。

まるで心のない道化師のようじゃ。



「のぅ、柳生。」

「何ですか?」


ふわりと笑いこちらを向く。

本日ハ晴天ナリ―――

日差しは強くじっとしていても汗が出る。


緑の地面に白いラインが引かれた箱の中で、白い詐欺師は話しかけた。



「今度の試合、俺と入れ替わってテニスをせんか?」

「いいんじゃないですか??面白そうですし」


まさか了承されるなどミジンコほども思っていなかった詐欺師は少しびっくりした。


「では、早速練習じゃの―――雅治?」


怪しい目をした道化師は詐欺師になる。


「こりゃ驚いたぜよ…」






あれから3ヶ月、やっとの事で詐欺師と道化師の舞台は完成に近づいた。


「今のレーザービーム、なかなかでしたよ」

「そらどうも…」


もともと似ている詐欺師と道化師。

詐欺師はその道化師を一人締めした。


誰にもとられたくない独占欲。

しかし道化師は詐欺師の振る舞いに何も言わない。

「のぅ、なんでお前さんは怒らんのじゃ?」

「別にあなたに関心がないからですよ」

「まるで作られた言葉に聞こえるなり」

「そうかもしれませんよ」

「酷い奴じゃ」


いつも答えは簡潔で無駄がない。

感情などどこにも感じられない。

詐欺師はそれが悲しかった。



次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ