テニス/短い夢2
□初めて君としゃべった。
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なぜだかは知らんが気付けば俺はU-17の代表合宿に参加していた。
当然人見知りの俺は同室になった奴らとも話せないでPCばっかりいじっとった。
俺の後ろでは同室の海堂、切原、日吉がババ抜きしとった。
なんだかんだで俺以外の三人は関東組ということもあり仲がよかった。
なんだか俺は疎外感を感じとった。
もちろん、自ら絡みに行かない自分も悪いと思っとる。
目付き悪いんも自覚しとる。口数少ないんも態度悪いんも全部や。
そんなある日や、日吉と海堂は自分らの学校の部長に呼ばれて部屋には居らんかった。
切原と二人きり。
こいつがすごい奴やということは全国でようわかった。
正直、悪魔化した姿を見たときは鳥肌がたった。
恐怖した。
しばらくはお互い無言の時間が続いた。
もちろん俺はPCで音楽を聞いとった。切原も切原で自分で持ってきたゲームをしとった。
だが、ふいに肩を叩かれた。
「なぁ、光」
「……?」
正直イラッとした。
馴れ馴れしく呼び捨てやし、好きな曲を聴いとる最中やったからや。
「なん?」
「あのよ、お前ここクリアできる?ゲームとか詳しそうだからよ」
詳しそうだから…って…詳しなかったらどないすんねん。
「あ…」
『レイ●ン』やった。
「お、その反応はこれ知ってんな!」
切原は嬉しそうに笑って「これ、うちの先輩がやれって」って嬉しそうに話した。
「切原は…毎日楽しそうやな…」
「あたりまえだろ、大好きなテニスできんだからよ」
本当にテニス大好き、という顔をして切原はそう言った。
「けど本当は光と話す口実でお前の好きなゲーム先輩に調べてもらったんだぜ?」
「……え…?」
その言葉にびっくりした。
「これからもヨロシクな」
にかっと笑う切原の表情に不覚にも俺はドキッとした。
初めて君としゃべった。
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