Storys
□dim.0
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「で、ユキはどうなの?」
透き通った大きな瞳が、俺を捕らえる。
心の中を透かして見るような、射抜くような眼差しに、ドキリと心臓が跳ねた。
「俺は――…」
大きな白い建物の中の、小さな白い部屋。
彼女の"すみか"。
学校帰りにそこに寄ることが、俺の小学生の頃からの習慣だ。
銀の取っ手の付いた白い扉を引くと、彼女はいつも、白い布に腰を下ろして大きい窓から空を眺めている。
背中の真ん中くらいまで伸びた栗色の髪はフワフワと緩くウェーブがかかっている。
久しく陽を浴びていない肌は頭から爪先まで透き通るように白くて、消えてしまうんじゃないかと、焦る。
だから確かめるように、名前を呼ぶ。
「――芽唯」
人形のような彼女が振り向いて、笑う。
息を詰めていた俺も、動いた、生きてる、と、変に安心してその場を動く。
そんな儀式めいたことを繰り返して幾年月。
いつものように訪ねた彼女の部屋で、問い詰められた、厄介な問題。
彼女の瞳からは、感情が読みとれなくて。
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