【本】青春ボイコット

□第4話
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繋がれたボール。
込められた思い。

量ることのできないその思いはずっと繋がっていく。




-化身-




天馬から託されたボールを受けとった夏目はキッと辺りを見渡す。


『…守ってみせる』



―インサイト

夏目の持つ力の一つ。
夏目の視界にのみ見える人と人との間を抜く道。
その一本を見極めると夏目は走り出した。

走り出した先に集まる騎士団の者達。
抜ける訳がない。剣城は口角を上げ様子を見ていた。


「もうあきらめな!!お前には抜けねぇよ!!」
『取らせない!』
「!!」


勢いよく走り込んだそのトップスピードのままボールを高く蹴り上げる。
夏目を囲んでいた全員の頭を抜けたボール。
上に気を取られている間に空いた人との隙間をすり抜けた。

「しまった!」
『遅い!』

包囲網を抜ければ後はボールを死守するのみ。
再び夏目に保持されたボールに敵味方は唖然とした。
ガッツポーズを決めて喜ぶ天馬にブイサインを送る。

だがそんな喜びもつかの間。




「調子に…乗るな!!」
『なっ…!?』




次の瞬間ボールは剣城の足元へと奪取されていた。
沸々と湧き上がる怒り。
それは剣城の表情から見て取れる。



「水城夏目。そして松風天馬。その顔…気に喰わねぇ。くだらねぇんだよ、サッカーなんて!」



剣城の背後から巻き上がる黒いオーラ。

「まさか…あれは!」

大きくなっていくそれは徐々に形を成していく。


「化身…!」


剣と盾を携えた騎士。
剣城に仕えるよう雄々しく立ち構えるのはまさしく"化身"



「これが俺の化身。"剣聖ランスロット"だ」



人が作り出す気。
力が極まった時それは形となって現れる。
都市伝説とまでも言われたそれが、今こうして目の前にある。

その威圧感、存在感は計り知れず皆はそれを目に焼き付けんばかりに凝視した。


「驚くのはまだ早いぜ!」


言葉と共に天馬に突っ込む剣城。
そのスピードは先程までの比ではない。
突き刺さる剣の様な蹴りが天馬に繰り出されようとされた。
天馬がやってくる衝撃に目固くを閉じた瞬間、2人の間に滑り込んできた小さな体。



『させない!!!』



大きな衝撃がフィールドに響く。
目を開けることも困難になる程の衝撃。
それが収まって次に目を開いた時、そこにいたのはランスロットと対峙するもう一つ
の化身。


「お前まさか…!!」
『化身を使えるのが君達フィフスセクターだけだと思わない事だね』


大きな三又の槍を携えた鎧を纏った女戦士。
美しさすら感じさせるその容姿に誰もが息を呑んだ。





『これが僕の化身……"半神ワルキューレ"!』




ワルキューレ
戦場において死を定め、勝敗を決する女性的存在。
主神オーディンの命を受けて天馬に乗って戦場を駆け、戦死した勇士たちを選びとって天上の宮殿ヴァルハラへと迎え入れる役割を持っていたとされる「戦死者を選ぶ女」

剣城のランスロットを対峙する様に凛々しく美しい化身がそこには存在していた。








けられない
(騎士と戦士の戦い)


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抜粋:wikipedia
ただし化身の容姿は天音の捏造です。

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