【本】無印夢

□きっかけ
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サッカー部が廃部になるかもしれないという危機
噂には聞いていた
『嫌い』だけど心のどこかで気になっていたから

“彼”がやってきたのはそんな時だった

タイミングを見計らっていたようだ、と思った
私がサッカーをやっていたなら一目散に彼の所に行ったんだろう
でも私はサッカーを捨てたの




『私がサッカーをやったら、誰かを不幸にする』





そう、いい聞かせて
何故だかは分からないけど彼もサッカーをやめた、と言っているのを偶然聞いてしまったこともある
残念だとは思ったけど彼にも何かしら理由があったんだろう、私には関係ない

そんな事言っても心のどこかで気になっていたんだろう、帝国学園と雷門の試合を見に行ってしまった
今思えば、それが全ての始まりだった気がする




「ファイアートルネード!」




世界が、色付いた









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以来私は、家の方向とは逆の河川敷のグランドに通うようになっていた
決してボールを蹴ったりはしない、ただ見てるだけ

それでもう満足だから




キキッ

橋の上で練習を見ていた私の横に、一台の黒塗りの車が止まった
誰だろう、と後ろを見れば車から降りてきたのは雷門生徒なら皆知っているであろう人が


『雷門さん…?』
「夏美でかまいませんわ。氷星唯さん」
『じゃあ、夏美ちゃん。私に何か用?』


理事長の娘さん、雷門夏美
関わりこそないから自分の名前を知られていて少し驚く
私の隣に立って練習風景を目に入れる雷門さん、もとい夏美ちゃん
次に夏美ちゃんが私に発した言葉に、私は軽く度肝を抜かれる事になった



「貴方は……何故サッカーをしないのかしら?」



目を見開いた
確かに私はサッカー界の一部の人間には有名な部類に入るのだろう
それに相手は理事長の娘。経歴なんて調べる事はいくらでもできる



『私がサッカーをすると皆不幸になるからだよ』



それしか答えはない
この話を終わらせたくて、いつもならもう少し練習を見ているけどもう帰るねと嘘をついた


河川敷の横を通ろうとしていた時、“彼”がシュートを放つ姿が見えた


「ファイアートルネード!」
「豪炎寺っ!!!」


でも、生憎昨日は雨だった
足場は最悪。そんな状態で思いっきりシュートなんか打てば……



「「危ない!!!」」




方向が大きく変わってしまった彼のシュートはマネージャーの人達の隣で練習を見ていた小さな子供達へと向かっていく
丁度その子供達は、“あの子”と同い年ぐらいで


―傷付けさせない


足は勝手に動いていた


『伏せてっ!!』



ちゃんとその声は子供達に聞こえていたらしい、慌てて頭を伏せる子供達
炎を纏ったそのボールはもう目の前



『アイス……』



懐かしい感覚が甦る
思いっきり河川の芝を蹴り上げ、



『トルネード!!!!』



ボールは一直線にゴールへ突き刺さった
思ったより腕…いや、足は落ちていないらしい
サッカー部キャプテンの円堂くんはしつこい勧誘で有名だ

私はやばいと思って全速力でにその場を去った






「アイツ……」





サッカー部全員に顔を覚えられてたとも知らずに





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