【本】無印夢

□休息
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「海だー!!」


普通の海よりも数段澄んでいてキレイな沖縄の海視界いっぱいに入れ、円堂は両手を広げて叫ぶ
その格好は海パン一丁。今日はキャラバンの全員で息抜きがてらの海水浴
綱海はサーフボードを片手に、壁山や栗松はスイカを片手に、風丸はビーチボールを片手に、楽しむ事は沢山あるようである


「先輩見てくださいあの珊瑚!ここからでも見えますよー!」
「すごーい!」


当然マネージャー陣も海水浴に強制参加
春菜や秋は浜辺で珊瑚を指差して喚起している

そんな中夏未は優雅に大きなパラソルの下で椅子に寝転がってその様子を見ていた
流石はお嬢様とでも言おうか、とても様になっている
氷星はタンクトップに短いパンツタイプの水着を着て、その上に薄手のパーカーを羽織って夏未と同じく、泳いでいる円堂や豪炎寺達を眺めていた
遠くで波に乗っている綱海がこちらに手を振っているのが見えて手を振り返せば、そっちに気を取られたのかボードから落下
あ、と思っている内に綱海は海面に顔を出し、ボードを回収して1度浜辺に上がってきた

どうしたのかと氷星が綱海に駆け寄ってみれば、がっしりと手を掴まれいつもの様にニカッと笑う
氷星の背中に嫌な汗が伝った


「氷星もサーフィンやってみろよ!」

『やだ』

「そう言うなって!お前ならできる!!」
『え、ちょ…!!』



嫌な予感的中

即座にでお断りしたがそんなもの海の男には通用しなかったようだ
もう一つ元から浜辺に置いてあったボードを渡され、綱海に自分が海を嫌う理由を告げられぬまま半ば強制的に海へと引きずりこまれていった
もういつもの間にかボードに体を乗せたまま沖の方まで来てしまっている


『つ、綱海くん!だから私…!!』
「だーいじょうぶだって!俺が合図してやるから」


なにが大丈夫なのかまったく分からないが、こうなったら無事に波に乗って浅瀬へ戻るしかない


「今だ!」
『……もう!』


綱海の合図で思い切ってボードの上に立ち、大きな波を感じる
バランスをとって波に乗るのは案外心地よくて、ちょっと、本当にちょっとだけであったが氷星は面白い、とその一瞬を感じていた
が、波に乗る感覚はやはり初心者には難しかったらしい



『ひゃぁっ!!』

ザッパーン



豪快な音を立ててボードから落下した
水柱があがり、落下地点からそれなりに近い所にいた円堂と豪炎寺に水しぶきがかかる

やっぱり駄目だったかーと少し遠くで波に乗っていた綱海が呟いているのが聞こえる
氷星の乗っていたボードが円堂の元に流れてきて、それを受け止めた
2人は氷星が海面に上がってくるのをじっと見て待っていたが、その氷星はなかなかあがってこない


「……氷星のヤツ…あがるの遅くないか?」
「あぁ…」


………
そんな間があき、二人は同時にバッと顔を見合わせた


「「…まさか…………!!!!」」











「ホントに悪かった!!」

『ゲホッ…げほっ…だから言おうとしたのに…』



砂浜で座り込んだ唯に土下座せんばかりの勢いで手を合わせて謝罪する綱海
その頭には誰かに殴られた痕が見える




『私泳げないって…』




そう、実は氷星はカナヅチだったのだ



「俺達があそこにいなかったらどうなってたか…」
「そこは結果オーライ!助かったんだからよしとしといてくれって」
『もー……綱海くんのばか…』
「は、ちょ、豪炎寺!もう一発は勘弁してくれよ!!」


ちなみに綱海の頭を殴ったのは豪炎寺だったらしい、拳を構えて綱海を睨む
慌てて両手で頭をガードするような体制を取った綱海にハァ、と息を付いてその拳を収めた
円堂も何にもなかったからよかったと笑えば綱海はそれに便乗
そのまま二人でサーフィンをしに行ってしまった
浜辺に二人、氷星と豪炎寺が残される


『さっきは、助けてくれてありがとう。豪炎寺くんがいなかったら私溺れてたかも』


あの時、円堂はボードを持っていたためもぐる事が出来ずそれよりも先に海へ飛び込んだのは豪炎寺だった
まさか本当に泳げないなんて少し驚いてしまったがそれはしょうがない事、慌てて溺れかけていた氷星を自分の胸へと引き寄せ、海面へ上がったのだ


「気にしなくていい、当たり前のことをしただけだ」
『でも、ありがと』



外の暑さに負けないぐらい、二人の周りは温度が高かったとか







(でも豪炎寺くんの胸板近かった…な……ひゃぁぁ恥ずかしい!)
(…思ったより…柔らかかった………)


思い出しては赤面する二人
綱海は密かに氷星を海に落して正解だったのではないかと思っていた




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