【本】無印夢
□やっぱり貴方の隣で
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沖縄から発車するバスの中
帰ってきた豪炎寺の席は元と同じで唯の隣だった
あえて戻ってくる前と違う所をあげるなら、その豪炎寺の隣に吹雪がいるところぐらいだ
「よーし!じゃあ出発だ!!」
円堂の大きくて明るい声が響き渡り、キャラバンは出発する
お菓子を食べる者、談笑する者、キャラバンの中でやる事は人それぞれ
そんな中唯はいつも通りというかなんと言うか、殆ど動いていないバスに酔っていた
目を瞑ってそれに耐えるものの、やはり辛い
「氷星」
『へ?』
急に声を掛けられたかと思えばグイッと頭を引き寄せられ、豪炎寺の肩に寄りかかるような形になる
「無理するな。寝てればいい」
今までこの席に座っていて感じた虚無感が解けていくような感覚
唯はこの安心感をきっと忘れないだろう
『ありがと……』
最初にキャラバンに乗った時のように頭を肩に引き寄せる様に肩に乗せてくれて、暖かい体温が隣にあって、
(私って…豪炎寺くんがこんなに好きだったんだ…)
まどろむ意識の中で改めて豪炎寺への気持ちを自覚するのだった
「唯ちゃん、やっと寝たね」
その隣にいた吹雪が、唯を起こさないように小さめの声で言った
すると周りにいた風丸や円堂、塔子に染岡、アキや夏未までもがその寝顔を見に来る
「よかった」「やっと寝たのか」などと言う会話が自分の周りを行きかい、一体なんなんだと豪炎寺が無言ながらも思っていると、その答えはあっさりと次の言葉で理解できてしまった
「やっぱり、豪炎寺の隣が一番いいんだな」
「本当ね。彼女、貴方がいないときはキャラバンで一睡もしなかったのよ?」
夏未がどこか面白そうな顔で豪炎寺に向けて告げる
豪炎寺は反応こそしなかったものの体は正直だ
「豪炎寺くん。顔、赤い」
吹雪にまでも面白そう、と言うか楽しそうな顔で言われた
照れくさくてふん、とそっぽを向くが内心では嬉しさを抑え切れなかった事も事実
自分が彼女に心を許されているのかと思うと自然と笑みが零れる
肩に感じる重みが、途端に愛しいものへと変わり、控えめにその頭を撫でた
「おい豪炎寺ー!唯が寝てるからって変なことするなよ!」
「誰がするか」
一之瀬が完全に茶化した声で言えば、それは冷静にぴしゃりと返しこれ以上起きてても何かを言われるだけだ、と豪炎寺自身も寝ることにした
(やっぱり、あの二人はこうしてるのが一番絵になりますね)
(本当。唯ちゃん幸せそう)
(二人とも締まりのない顔ね。…叩き起こしてやろうかしら)
(だ、駄目ですよ夏未さん!折角のいい雰囲気を台無しにするなんて!)
(冗談よ。流石に私も、そこまで野暮じゃないわ)
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