【本】無印夢

□離脱
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FFI2戦目、アルゼンチン代表「ジ・エンパイア」
影山の策略により円堂くん、鬼道くん、佐久間くん、不動くんのいないイナズマジャパンでの戦い
皆がその分をカバーしようと空回りして自分の実力が発揮できなかった



私もその1人

―4人の分も頑張らないと
―私がしっかりしなきゃ


思えば思うほど動かなくなる足はまるで重たく太い鎖が絡みつくようで
1人くらい闇の底に置き去りにされたような感覚
同じフィールドにいるのに皆に手が届かない


自分の無力を痛感した













「氷星は今日からイナズマジャパンの選手メンバーから外れてもらう」



それはアルゼンチン戦翌日の朝食の席
久遠監督からの一言で周りが一気にどよめく
唯もその事を知ったのは今。目を見開いて監督を見やる
あぁ、理解に時間が掛かりそうだ


「ちょ、ちょっと待って下さい監督!」
「氷星は豪炎寺や吹雪などに続くイナズマジャパン攻撃の要です。なぜ外されるのかが分かりません」
「そうです!」
「どうしてなんですか!」


数名がガタリと席を立って講義を立てる
そうだそうだとそれに賛同しその返答を待つ一同
眉一つ動かさず、騒がしかったこの部屋をぴしゃりと沈め久遠はその答えを返した


「氷星。お前は分かっているんじゃないのか」
『…!』

「この前の試合、円堂を始めとする4人が抜け俺は不在
精神的不安の中の試合で追い詰められてみて分かった事がお前達にもあったことだろう」


「確かにそうですけど…なぜ氷星さんだけが…!」








「その答えは1つ、決定的にして埋める事の出来ない大きな穴」







人差し指を立て、視線で唯を射抜く







「男と女の体格、体力差、そして何よりその怪我のハンデだ」

「「「「「!!!!」」」」」






男と女
いくら唯が天才的なサッカーテクニックを持っていたとしても、それを発揮する事ができなければ意味のないこと
それに加えて前半か後半、どちらかしかそのフィールドに立つことは出来ない





「ここは世界が舞台のフィールドだ。これ以上氷星の力が通じるとは思えない。これからはサポートに徹してもらう」




以上だ、と吐き捨て久遠は部屋を去った
沈黙が訪れ視線は皆唯の方へ
誰も声を掛けることが出来ず、何を言っていいのかも分からない
当の本人は久遠の出て行った入り口を見つめたまま




「あの…唯ちゃ」
『ごめん』



秋が声を掛けた時、唯は席を立って部屋を出て行った
その小さな背中に一体彼女はどれほどの物を背負っているのだろうか

一同は、そう思わずにいられなかった



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