【本】臆病者の恋物語

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サッカーが上手い癖にサッカーを嫌いと言う神北。
その言葉は俺から考えれば矛盾だ。
俺達サッカー部同等…もしかするとそれ以上の実力を持っているであろう神北はサッカーが社会を左右するこの世の中では貴重な人材の筈。

どうしてそんなことをするのかわからない。

だが一つ言えるのは毎日サッカー部を見に来ているという事は完全にサッカーに興味が無くはないのではないかという事。



ほら神北は今日も俺達を見てる。






-Realize her-







「キャプテン、今日もあの人来てますね」
「…あぁ」
「霧野先輩から聞いたんですけどあの人凄くサッカー上手いらしいじゃないですか!なんでサッカー部に誘わないんですか?」



ホントに、松風の無知で無垢な所は長所であり短所だと思う。
こう言う事をお構いなしにずけずけと聞けるのはいい意味でも悪い意味でも凄い。


「アイツは…神北はサッカーが嫌いだそうだ」
「サッカーが……嫌い?」
「本人が言ってるんだ。間違いないだろ」
「でも、凄くサッカー上手いんですよね?」
「だからそう言ってるだろ」



俺がそこまで言って、初めて松風が何かを考える素振りを見せる。
一体何だって言うんだ。


「……嘘ですよ」


聞こえた声はハッキリと、そして真っ直ぐで。



「サッカーが嫌いな人がキャプテンが認める程サッカーが上手い訳が無いじゃないですか!」

目を見開いた。
一瞬でもそんな考え、したこともなかった。


「…どうしてそう言い切れる」
「え?」

「ただ単に神北に才能があっただけかもしれないだろ」


そうだ。俺は才能だと思ってた。
だから興味がないし嫌いなんだと、そう決めつけて。
やってみたらできた。それぐらいのものとしか捉えていなかったんだ。


「好きだからこそ…キャプテンぐらいのレベルになるまで頑張ったんじゃないかって、俺思うんです」


松風が羨ましいとすら思う。
コイツは神北の事を知らないんだろう。
それでも神北の事をここまで言う。

神北は感情を全くと言っていいほど表に出さない。
分からないなら考えるしかない。




「俺、ちょっと神北さんと話して来ます!」



駆けて行く松風を止めることはしなかった。
アイツも知るべきだ。神北の事を。

きっと無駄だと知ることだろう。





彼女を思い知れ

(引き止めなかったのは)
(善意か悪意か)

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