【本】キミと奏でる愛の旋律

□第6曲
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波乱の実力披露。

当の本人奏はとても楽しそうであったがやはりその実力には目を見張るものがあった。
流石神のタクトと歌われる神童拓人の妹と言った所か。
上級生は勿論、ここにも奏の実力に笑みを見せる人物が一人。




「面白いじゃねーの」




剣城がニヤリと笑った。
遠巻きから見ていた剣城はボールを足で転がしつつゆっくりとグランドへ歩を進める。
一瞬で空気が張り詰めた。


「なんだ剣城」
「お前に興味はない。興味があるのはお前の妹だ」

『…私?』


キョトンとした顔で剣城を見遣る奏に周りがある一種の呆れを覚えたが今はそれどころじゃない。



「俺と勝負しろ」



叩き付けられた挑戦状。
きっとそれを拒否することは不可能だろう。
拓人が一筋の汗を流す。


どうする。どうすれば奏を……




『いいよ?』

「「奏!?」」





予想に反してその返答は奏が出してしまった。
しかも拓人からすれば最悪の方向に。

剣城が笑みを深くする。



「やめとけ奏!無理に受けなくたっていい!」
『大丈夫。剣城くんだって私がちょっと気になってるだけだよ』
「でも…!」

「拒否権はない。それにそっちも認めたんだから文句は言わせねぇぜ?」



強い物言いに拓人が押し黙る。
そしてセンターサークルに剣城がボールを運ぶ。
心配なのは心配だがこうなってしまってはどうしようもない。

フィールドに立つ剣城に奏が向き合い、全員がフィールド内から去った。




「勝負は簡単。俺のシュートを止めてみな」




張り詰める空気に全員が息を呑む。
ジリ、と足に力が入った。











「デスソード!」











剣城の禍々しいオーラを纏いボールが蹴り出される。
誰もがそのボールの行方を見やったが奏は至って冷静だった。



「奏!」



叫んだのは誰だっただろう。
むしろ全員が叫びたかったのかもしれないが何も言う事が出来ない者の方が多い。

勢いよくフィールドを駆けるボールが奏の目の前に迫った時、奏が動いた。







『リフレインッ!』




ザンッ





剣城の横を通り過ぎたのは間違いなく先程剣城が蹴ったボール。
まさかと剣城が後ろを振り返ればそのボールはゴールに突き刺さっている。






「あれは…!?」






「俺の…!」

「剣城のデスソード!?」





そう。
紛れもない、奏のあのシュート。
あれは剣城のデスソードだった。

違う所を挙げるとすれば剣城の放ったデスソードよりも威力が桁違いに高かった所。

目を見開いて唖然とする一同。
剣城はキッと奏を睨みつける。



「どういう事だ」

『私のリフレインは自分の力を上乗せして相手の力をそのまま返す技。剣城くんのデスソード、そのまま返させてもらったよ』



リフレイン
詩や楽曲で、各節の終わりなどに同一の詩句・楽句を繰り返すことを指す。
奏の言う通りこの技は同一の技をそのまま繰り返す技。
剣城のデスソードも例外ではない。
奏の力が上乗せされたデスソードは剣城の度肝すら抜くものだった。



「奏ぇぇぇぇ!流石俺の妹だぁぁあぁ!」
『きゃぁっ!?』



物凄い勢いで奏に飛びついた拓人はすぐに引き剥がされることになる。








「離れろシスコン」

『つ、剣城くん?』
「なんだ!いくらお前でも奏と俺の間を引き裂くことはさせん!」






「気に入った。俺の女になれ奏」





『え?』





「「「「「えええぇぇえぇぇぇ!?!!??」」」」」」












波乱はまだまだ続く

(認めん!俺は絶対認めないからな!)
(テメーにゃ聞いてねーだろ)

(…競争率上がるなぁ)


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