【本】青春ボイコット

□第15話
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スピード感のあるハイレベルなカット・ドリブル・シュートにキャッチ
まさにファーストチームと呼ぶのに相応しいその練習風景に夏目は胸を躍らせた。
その所為なのか天馬も信助もいつもの調子は奮えず、単純なトラップミスも見て取れる。
ベンチから聞こえる水鳥の叱咤に見える葵の苦笑い。


「水城!」


車田からのパスを受け、夏目がドリブルでフィールドを上がる。
それでもファーストのディフェンス陣は流石と言うか、やはり威圧感みたいなものを感じた。

―凄い

一言でいうならばそれしかない。
言葉のボキャブラリーがないものだとは思ったが本当にそんな言葉しか出てこない。


『神童さん!』


拓人にパスを回せば、一瞬剣城に視線をやった後ゴールへ走り出した。
南沢にボールを渡せば立ち塞がる三国との一騎打ち。
ソニックショットにバーニングキャッチ、
ぶつかり合う技と技に興奮を隠せないでいた。

練習とはいっても勿論本気。
守る時は守り、攻める時は攻める。
練習について行くのも精一杯になりそうな満身創痍な体に少し悔しくもある。



「今日の練習は終了だ!クールダウンを忘れずに!1年は片付けもする事!!」

「「「「『はい!』」」」」



日が大分傾いてから。
指示のもとクールダウンを始める2、3年に、夏目達はボールを始めとする用具を仕舞いにかかる。


『信助!そっち倉庫じゃない!』
「え!?ど、どっちだっけ?」
『あっち!天馬、こっち手伝って!』
「うん!」


てきぱきと2人を使い倒し、早急に片づけを終える夏目。


「…随分早いな」
『まぁ、慣れてますから!』
「慣れてる?」
『こき使われることにですよ』

「?」


クールダウンを終えた三国に問われたものの逆に三国の疑問を増やすことになっていたのを夏目は知らない。

さぁ今日もこき使われに行かなければ。
夏目は大急ぎでトイレに駆け込み制服へと着替え始めた。

明日は土曜日。
バイトはほぼ丸1日入っている。
しまったなぁと思いつつも生活費の1部を稼ぐ為だ。
流石にそれを抜けるわけにもいかない。

帰り際すれ違った拓人と霧野に明日は顔を出せないかもしれないとだけ言って夏目は虎ノ屋へ駆けて行った。


「…不思議な奴だな」
「……あぁ」



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