【本】臆病者の恋物語

□4.5
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神北へと駆けて行く松風を見つめたまま、俺はしばらく様子を伺っていた。
どうせ冷たく一蹴されて終わる。
そう思っていた結果は後にひっくり返ってしまったが、この時ばかりは予想だにしていなかった。

松風に気付いた神北が振り返れば一瞬松風がビクッと反応を示す。

先例とも言おう神北の冷ややかな視線に戸惑っているのが遠目からでも見て取れる。
ほら、結局一緒だろ?
声が聞こえてくる。これは松風の声だ。


やはり何かアイツの長所であり短所である直球さが裏目に出たのか神北がこっちを物凄い形相で見てきた(気がする)。

一体何を言ったんだと思いつつも2人は会話を続けているし、それが途切れる気配も見られない。
それどころか神北が少し笑っている様にも見えた。
どんなマジックを使ったのか不思議に思うがこの距離では何を話しているかも聞こえないし神北の表情も伺えない。

だが俺と違い松風は神北とのサッカーに関する意思疎通ができている様にも感じる。


神北が松風の頭を手を置いて去って行った。


その様子を見つめていた俺、そして松風。
淡々と去って行く神北の背中は何かを語っている様に感じたが、それは気のせいだったのか否だったのか。





「キャプテン、俺やっぱり神北先輩が本当にサッカーが嫌いだとは思えません」





帰ってきた松風の第一声。

どういうことだ、と言いたかったが言った通りなのだろう。
いつもとは違った神北の様子から松風が何かを感じ取っているのは明らかだというのに。
どうして松風に、
言葉の続きは飲み込んだ。
松風に言ったって仕方が無い事。



「…そうか」



そんな返事しか返せない自分を珍しく馬鹿だと思った。


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