【本】キミと奏でる愛の旋律

□第8曲
1ページ/1ページ



蘭ちゃんに家まで送ってもらって、どうせなら一緒に夕飯食べようよと誘ってみたけど明日までの宿題があるからってやんわり断られた。
そっか、学年も違うから宿題も違うよね…。
なんだか改めて年一つの大きさを感じた気がする。

お兄ちゃんもそうなんだと思うとちょっと寂しくなった。

家に帰ってから、とりあえず汚れた自前のタオルをお手伝いさんに渡して自室に向かう。
防音の施された私の部屋にはお兄ちゃんの部屋にあるグランドピアノよりかは少々小さめのピアノに、綺麗な箱に収納されているフルートがある。
小さい頃から使っているそれには妙な愛着があって、暇があったら今でも何と無く吹いていたりもした。
今ではしなくなった発表会を懐かしんでいると遠くから聞こえた小さな音。

お兄ちゃん、帰ってきたんだ。

以心伝心とはよく言ったもので、多分音なんかなくてもお兄ちゃんが帰ってきた事に気付ける自信がある。
耳を澄ませれば徐々に近付いてくる足音。


「奏!お前今日一人で帰ったのか!?」
『違うよ?蘭ちゃんと二人で』

夕飯誘ったけど断られちゃった。
そう言えばなんだか何かを考え込むお兄ちゃん。


「な、何もされてないか!?暗がりに連れ込まれたりあんなことこんなことされてないか!?」

『あんなことこんなことって?』
「霧野め…後で電話しよう」
『…?』


「しかし奏の誘いを断るとは…!いや…だが奏と一緒に夕飯なんて…」



ぶつぶつと呟いてるみたいなんだけど私には聞こえない。
蘭ちゃんがどうかしたのかな?
あ!もしかしてお兄ちゃん…蘭ちゃんと一緒に夕飯食べたかったとか?
それだったら悪い事しちゃった…!でも蘭ちゃん宿題あるって言ってたし…!


『ご、ごめんねお兄ちゃん!次はちゃんと蘭ちゃん(夕飯に)誘うから!!
「霧野を(性的に)誘うぅぅ!?
『うんっ!』

「だ、駄目だ!!いくら霧野でも俺が絶対に許さないからな!!」

『え?蘭ちゃん夕飯に誘っちゃ駄目なの…?』



お兄ちゃんの動きがピタッと止まった。
私変なこと言ったかな…?
でも蘭ちゃん夕飯に誘いたいし…お兄ちゃん一緒に夕飯食べたくないのかな…?

お兄ちゃんが何でか胸を撫で下ろしている。
しばらくして私の頭にお兄ちゃんの手が降ってきた。



「…ややこしい言葉を使うなよ…寿命が縮むかと思ったぞ」
『?えっと…気をつけます…?』



久しぶりに撫でられた手は昔と変わらなかった。
変わることもあるけど、変わらないものだってある。

妙に嬉しくなって思わず目を細める。



「どうかしたか?」
『えへへ、何でもない』
「そうか。…そろそろ夕飯だ、行くぞ奏」
『うん!』



笑うお兄ちゃんは素直にカッコよくて、キラキラしてる気がする。
そんなお兄ちゃんの側にいられる私は幸せ者だと、私は思うのです。







妹思いな君と夕食前の出来事

(あ、ちょっと先に行っててくれ)
(どうしたの?)
(ちょっと霧野に電話をな)





-----------

二人きりだと案外真面目なお兄ちゃん。

●●

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ