【本】青春ボイコット

□第24話
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拓人と話をしたい、
そんな天馬の希望を叶える為、昼休みに拓人を探しに行こうという計画を密かに立てた3人。

天馬は2年生教室、信助は3年生の教室、夏目は他、と言うように分担して探すことにした。
教室に駆けて行く2人の背中を見ながら、拓人が行きそうな場所を考える。
夏目には大人しく教室にいるとも外にいるとも考えられなかったのだ。
人があまり来なくて、人目に付かない、そんな場所。

屋上、

ピンときたカンを信じ階段を上がる。
そして重たいドアを数ミリ開けたところで夏目はそのドアを押すことをやめ
た。





「サッカー部をやめる!?」
「どういう事だよ神童!」



『(……ビンゴ)』




"神童さん見つけた。屋上"

電話帳で言えば松風よりも上にある西園のアドレスに簡潔なメールを送りそっと耳を傾ける。




「…水城の事か?」

『(!)』

「…分からない」
「え?」
「俺には分からないんだ。もう本当のサッカーが何なのかも、水城が言っていたことも…!」




やはり自分は彼を苦しめる要因となってしまっていたのか。
フッと俯いくとメールの連絡を見たのか階段を駆けあげってくる天馬と信助。

勢いを殺すこともないままドアを開け放った天馬に続き屋上へ。





「俺には無理です。もうやめます」





瞬間聞こえた拓人の言葉に一瞬3人は唖然とした。
そしてまだ3人の存在に気付いていなかったのか三国と霧野が会話を続ける。


「お前なぁ、俺達がどんな気持ちでお前にキャプテンを任せたのか、わかってるのか?」
「昨日の河川敷を見たからか?」
「来てたのか?」
「えぇ」



「キャプテン!」



耐え切れず、と言った様子で声を上げようやく3人はその存在に気が付いたようで目を丸くしている。



「やめちゃうんですか、本当に!」
「止めないでください!」
「俺達、去年の決勝のビデオ見直したんです!音無先生から本気の試合だって聞きました!カッコよかったです!神のタクトも、フォルテシモも!」




必死の叫び。
本当の憧れからくる叫びはもう彼には届かないのか。



「もういいんだ」




『「「!」」』

「円堂監督となら、あの決勝みたいな本当のサッカーできます!」






「本当のサッカーってなんだ」





先程も拓人が漏らした"本当のサッカー"
考えすぎてもう何もわからなくなってしまったサッカーと言うものの存在。
自分はサッカーが好きだったのか、それとも嫌いなのか。

それすらも分からなくなってしまった。

押し黙った天馬達。
夏目は一言も発さない。




「苦しいんだよ、お前達の話を聞いてると」




瞳が訴える苦しみ。



「あ……」

「もう、話いいですよね。それじゃ」






拓人が背中を向けて去ってく。
背中が物語るのは彼に圧し掛かった責任、苦しみ、そしてそれらに潰されぐちゃぐちゃになったプライド。

何も言えなかった。
少なからず自分のせいで彼を悩ませてしまったという結果。
それがどうしてもやるせなくて、怖かった。



「キャプテン…」



拓人を"キャプテン"と慕う天馬に罪悪感が圧し掛かる。



『(こんなことばっかりだ)』



空回り、空回り。
罪と謝罪を繰り返す抜け出せないループ。

結局その後も夏目は一言も発さないまま時は過ぎていった。


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