【本】キミと奏でる愛の旋律

□パニックバレンタイン
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バレンタイン…女が男にチョコやらクッキーやらお菓子をプレゼントする…一大イベント。
俺は今までこのイベントにおいて、ある一点を除き全てが受け身だった。
だが今年、奏が雷門に入学した今年。
ある一点と形容した出来事に本気を出さなければいけなくなった。


「奏、今日チョコ持って来た?」
『勿論!はいこれ葵ちゃんの!』

「わぁ、ありがとう!じゃあこれ、私から!」


まずは一つ。同年代の空野に…と。


「…何してんだ神童」
「奏のチョコ配りの監視です邪魔しないでください三国さん」


毎年………バレンタインには奏が誰に何をあげているかのチェックをしている。
奏が男に何かをプレゼントするだなんて一大事だ。
もしも思いを伝えようものなら…相手がどうなることか…。
まぁとりあえずハーモニクスでも一発だな。
奏の為ならマエストロだって頑張ってくれるさ。


「それより神童。お前の靴箱からチョコが溢れ返ってるぞ」
「家に電話して全部処理してもらうので大丈夫です」

「女子からの気持ちを無下にするなよ」
「奏以外に興味はないので」

「…………」


三国さんの言葉に耳を貸す気はなかった。
今までもそうしてきたから特に罪悪感はない。


『あ、蘭ちゃん!おはようっ!』
「ん?あぁ奏、おはよう。今日は神童と一緒じゃないのか?」
『うん。今日はバレンタインだから!』
「そうか。…女子は色々忙しいんだな」


「…!霧野」


靴箱で空野と別れた奏に歩み寄った魔の手。
可愛い顔して奏に堂々と…!
しかも今日に限って。図ったか霧野め…!
こうなるのを知ってたら奏を一人で行かせなかったものの…これは俺の失敗だ…。


『これ、蘭ちゃんにね!』
「サンキュ。毎年悪いな」

『今更水臭いよ〜。じゃあ私まだ行くとこあるから!』
「じゃあ放課後に」
『うんっ』


次は霧野に一つ。

ラッピングはさっきの空野と同じ…なら大丈夫だな。
義理堅い奏のことだ…この後はサッカー部に関係する先輩達に配りに行くとみた。
そして予想通り奏は三年の教室に向けて階段を上るのが見える。
腕に提げている紙袋にはあと部員、マネージャー、監督の数のチョコしか入ってない筈。
そしてその中にきっと俺の分も入っている筈。
着々と部員にチョコを渡していく奏の監視、チェックをしながら今日の休み時間はずっと奏についていなければ…と思った。


「奏ってお菓子作り上手なのねー」
「うんうん!この生チョコすっごい美味しいんだけど!」
「葵も見習いなよー!」
「ちょっとどう言う事よ!!」

『葵ちゃんのカップケーキも美味しいよ?』
「ほら見なさい!」


1番時間の長い昼休みは貰い貰われたチョコを食後のおやつがてら食べているらしい。
これならきっともうチョコを渡しに行く、ということはないだろう。
だが油断はできない。(奏は可愛いからな!)


「そういえば奏、もうキャプテンにはあげたの?」
「そりゃ家一緒なんだからあげてるんじゃないの?」

『うん。もうあげたよ〜』


…え?いや、ちょっと待て貰ってないぞ…!?
朝食は一緒に食べたが奏がチョコ渡しがあって先に行ったから貰ってない筈だ!


「キャプテン喜んでたでしょ?」
『直接はあげてないからわからないなぁ…』
「え?じゃあどうやってあげたの?」

『靴箱に入れたの!一回やってみたかったんだけど友達とか先輩にやるのは恥ずかしかったからお兄ちゃんでやってみたんだ』


俺の靴箱は今頃俺の用意した業者にチョコが全て綺麗に掃除され…靴箱だとぉおおぉおぉお!?!?







「俺としたことがぁあぁぁぁぁ!!!」







その後業者に慌てて問い合わせた俺は無事に奏からのチョコを得ることができた。
今年からは自分の靴箱の中身をちゃんとチェックしようと思う。





パニックバレンタイン

(お兄ちゃん私のチョコわかった?)
(あぁ勿論!美味しかったぞ奏)
(…?なんでお兄ちゃんそんなボロボロなn(気にするな)

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